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民話(アジア) 1

「ブータンの民話」 恒文社
クムス・K・カプール 編著  林祥子 訳

   ブータンの民話


原題「Tales from DRAGON COUNTRY」。ヒマラヤの仏教国ブータン。国の守護神ともいえる龍(ドゥルック)にまつわる話など、森や湖のある豊かな自然と結びついた民話20編を収録。

はじめに ―「雷龍の住む国」ブータン―
三つの願い
天空のガンデン寺
ツォメン
借りてきたゴ
ひきがえるのイボ
ガサ・ラマ・シンゲ
豚の頭を持った預言者モテン・パゴ
モテン・パゴと悪魔
帰って来た王子
シン・シン・ラモと月
ロバの耳を持った王様




 神さまや悪魔だけでなく、伝説の半人半獣が現れるのが面白いです(「チョモラリ山のミギョエ」、「ツォメン」)。ミギョエは挿絵をみるとイエティのような姿(いや、イエティもはっきり知りませんけど・笑)

 また、龍や蛇もたくさん出てきます。民話では龍や蛇は水の象徴であることが多いので、水害を避ける願いから生まれた物語なのでしょうか。実際、ブータンは川があふれて橋が落ちたり、家が押し流されるようなこともよくあるようですし。
 水害といえば、湖の守り神にいけにえを捧げるというエピソードは「帰って来た王子」、「魔法の王冠」に共通していました。昔はこういう風習もあったのかもしれないですね。

 もうひとつ面白かったのは、登場人物たちの性格とお話の結末。怠け者やまぬけな者も、展開によっては意外といい思いをしているのです。
 もちろん働き者も褒められてますが、(働かなくても)気転がきく者や徳を積む者が結局は幸せになるお話が多い。ずるくない? と思いつつも、こういうお話も面白い〜。日本の昔話は「正直と勤勉さが何より一番」という前提が多い気がするので新鮮でした。

 気に入ったお話は……。
 森の巨人の住処から魔法のお椀を持って逃げ出し、最後には月に登ってしまう「シン・シン・ラモと月」。
 好奇心から住処を離れて帰れなくなった大蛇が、人間に生まれ変わる「二匹の大蛇の物語」。
 悪巧みに引き裂かれる恋人たちを描いた「ガサ・ラマ・シンゲ」。
(2010.3.27)

 

「チベットの民話」 青土社
フレデリック&オードリー・ハイド=チェンバース 編
中島健 訳

   チベットの民話


原題「Tibetan Folk Tales」。チベット人語り手から聞き取り、記録されたユーモアと知恵にあふれる民話集。

序言
天地創造
阿弥陀仏、観世音菩薩、多羅菩薩
花の木
スッパラカ
チベットの最初の王
パドマサンバヴァと幸運のスカーフ
アサンガが未来の仏陀に出会った話
リンのゲサル
湖のなかの城
殺すことを拒否した若者
白い雄鶏
賢い鼠
猿と月
人気ある詩歌、諺、謎なぞ
親切な男
三人の娘と迷った雌牛
お天気作り
困りものの息子
魔法の竹
消えた宝
美しい女たちの島
報いられた祈り
傘の木
遊牧民
恋人たち


 主に二人のチベット人――イェシェ・ツルティム、クショ・ララから聞かれた民話。特にイェシェ・ツルティムは母がすぐれた語り部で多くの伝承を聞いている方だそうです。
 内容は創世神話、英雄譚、ブッダの前世物語、変身譚と多彩。仏教の影響もつよく感じましたが、ただ物語として読んでもとても面白かったです。

 話の展開が日本や西洋の民話とも違うので、まったく先が読めない。「ええっ、そうなっちゃうの?」と何度思ったか。
「リンのゲサル」は一番はらはらしながらページをめくりました。このゲサルには他にもいろいろな話があるそうなので探してみようと思います。
 また、悲恋を描いた「恋人たち」。何とかして添い遂げようとする恋人たちの生まれ変わる姿が素朴で美しいです。

 あと、動物の皮というモチーフが多いのですね。日本の「鶴の恩返し」、「天女の羽衣」を思い出しました。
 皮を燃やしたあとには幸福な生活が待っていることもあれば、別れが待っていることもある。

 夫は妻に、いま悪魔の奴隷になっていて帰れないけれど、元気だから心配することはないと話しました。

 そ、そう言われましても。しかも、これでハッピーエンドになるというのが何とも不思議です。
 「皮もの」(?)の話には、「動物の姿からの解放」「完全な人間への転換を求める」物語、と註がついています。仏教でいう生まれ変わりと関係があるのでしょうか。

 「皮もの」で面白かったのは、妙に礼儀正しい「蛙」の物語。
 蛙のもとに泣く泣く嫁がされた娘は、夫=蛙を殺そうと金の蹄鉄で力いっぱいぶん殴ってみますが、蛙はまったく堪えず。それどころか、宝物をなくしてはいけないよ、と微笑む夫についほろりとしてしまう。そして、「一緒に暮らしてみたら、けっこう幸せかも」なんて考えるのんきな花嫁です。その後、お決まり(らしい)の競馬レースのエピソードを経て、無事ハッピーエンドに。
 これは絵本になったら子供がはしゃいで読みそうだと思いました。誰か描いてくれないかな。
(2009.8.27)

 

「チベットのものいう鳥」 岩波書店
田海燕 編  君島久子 訳

   チベットのものいう鳥


原題「金玉鳳凰」。とある国の王子は英明な王になるために、沈着さと強靭な精神を得る方法を雪山隠士に尋ねた。隠士は遠い森に住む金玉鳳凰を連れてくるように王子に言う。ただし、この神鳥になにを言われても決して口をきいてはならない、という。27編のチベットの民話を収録。

ものいう鳥をたずねて
金沙江の女軍
慈善家とカメ
九色鹿
如意宝
竹娘
チャアルカンのさばき
三人のラマの本心
双頭の鳥
ジャーマの機転
しっぽと頭のあらそい



 著者が「1954年にチベット族代表団から聞き取った物語をまとめた」ものだそうです。
 1954年というと、もしかしてダライ・ラマとパンチェン・ラマが北京で毛沢東、周恩来らと会見した時のことでしょうか?

 神鳥が語る短編をつなぎあわせて一つの長い物語がつくられる、連還体という形式の民話群。鳥の話があまりに面白いものだから、王子は戒めも忘れて「それで、その先はどうなったのだ」とついつい尋ねてしまいます。こういう劇中劇のような構成が楽しかったです。

 「白鳥になった王子」では、白鳥の王子が人間の姿で競馬祭に出ている間に、奥さんが家に残っていた皮を焼いたためにもとの姿にもどれなくなってしまいます。他の本にもこんな話がありましたっけ。

 行きずりの幽霊に気に入られて(笑)親友になる約束を交わしてしまい、泣くに泣けず、笑うに笑えない状況になってしまった若者のお話「幽霊とおくびょう者」。どこかのんき、というか、とぼけた感じが楽しい。

 拾った銀貨をネコババすることもなく持ち主に返したのに、あやうく難癖をつけられそうになった「もどった銀貨」や、公平で知恵のある村人が裁判官よりも賢くもめごとを解決する「チャアルカンのさばき」などは、物語の面白さと訓戒がぎゅっと凝縮された短編でした。

 どのエピソードも構成もとても楽しいです。

 ただ、中国の子供になじみやすくするためか、事柄や人名を変えてしまった点が「チベットのお話」にしてはどうも違和感がありました。
 訳者あとがきによれば、帝釈天→天帝、nam mkhav lding(チベット語)という仏教説話の神鳥→鳳凰、と変えられているとのこと。おそらく雪山隠士とか金花・銀花などの人名ももとは違うのでしょう。
 チベットなら、タシさんとかペマさんの9人や10人(笑)出てもおかしくないと思うのですが、1人も出てきません

 あと、ラマが悪者を演じる話が多いのも気になりました。業突く張りだったり、人をそそのかして殺人を企てたり。ラマではないけれど、慈善家ぶった商人が信心深くお経を上げるくせに奴隷を鞭打って働かせたりしてます。

 私も民話は数冊しか読んでいないので、「チベットに悪徳ラマの話など無い」とは言い切れませんが……でも、ちょっと多すぎでは? 反対に、高徳の僧など一人も出てきませんし。
 どうもすっきりしないので、原典を読みたいものです。
(2010.5.8)

 

世界の英雄伝説9
 ケサル大王物語」
筑摩書房
君島久子 訳

  ケサル大王物語―幻のチベット英雄伝 (世界の英雄伝説)


原題「格薩爾王伝」。「ケサル」は、リンのケサル王が周辺諸国を仏法の名のもとに制圧していくチベットの英雄叙事詩。この本では、英雄ケサルの誕生から即位、魔王討伐、ホル国との戦い、勝利までを描く。

第一章 天界にて 
第二章 地上での転生 
第三章 ケサル大王の誕生
第四章 悪魔退治 
第五章 ホルとの戦い


 巻末の解説によれば、「ケサル」は書写・木版の本だけでなく、口頭でも伝承されており、膨大な数の物語があるとのこと(この本はそのうちホル国との戦争を描いた一部分)。チベットを中心にモンゴル高原、ロシア南部、ブータン、中国・雲南省、四川省など、チベット仏教が影響を及ぼした広い地域に伝播しており、この本は青海省貴徳県で見つかった書写本を漢訳した本(甘粛人民出版社「格薩爾王伝」王沂暖)の邦訳。
 この本は、どうやら日本語でまとまって読める数少ないケサル本らしいです。

 悪魔が横行する下界のさまを嘆いた観音菩薩と梵天王によって、梵天王の子・トンギュ・ガルポが地上のリン国に遣わされる。
 彼はケサル王として即位、悪魔討伐の法を修めるために寺に篭るが、その間に第二夫人のメイサが魔王に囚われてしまう。ケサルは天界から降りる時に携えてきた剣や鎧で武装して、魔王討伐に向かう。
 一方、王が不在のリン国は、ケサルの叔父チャオトンタの裏切りによってホル国に攻め込まれた。残された第一王妃チュモはホルの黄色いテントの王に王妃になるようにせまられ、助けを求める使いをくりかえしケサルへ送る――と、こんなお話。

 主人公であるケサルだけでなく、リン、ホル両国の王家の人々が生き生きと描かれていて楽しかったです。少ししか登場しませんが、ケサルの異母兄ギャンツァシェーカルなどは主役を食うかっこよさだと思うのですが!

 とことん性根の悪いチャオトンタやら、メイサとチュモの女の嫉妬が一国の運命をさんざん揺さぶってます。妻たちの仲違いに翻弄されるケサルは優しいともいえるし……正直いって、かなり情けなくて人間らしい。でも、あまり奥さんを増やさない方がいいのではないか、と別の意味ではらはら致しました。
 しかし、ホル国との戦いが少々後味の悪い展開で終わっているのが残念。長い物語の、ごく一部分を扱った本であるせいかもしれません。

 トンギュ・ガルポが天界から降りる時にともなってきた「7本の矢」「緑玉の蛙」などは、即位後のエピソードにも登場。きっと、さまざまな象徴、意味があるのでしょう。他の民話にもよく登場する「蛙」がとても気になります。
 「ケサル」は長く、バリエーションも多い物語だそうなので、このような「共通アイテム」を探すと面白そう。もっと、いろんな話を読んでみたいものです。
(2010.5.31)

 

「チベット史ものがたり」 日中出版
C・ギブ 著 小川英朗 訳

 チベット史ものがたり (チベット選書)


原題「The Land of Snow」。チベット人の子供向けに書かれた、チベットの歴史や文化についての本。前半は紀元前からダライ・ラマ7世の即位までのチベットの歴史、後半の農村の生活の紹介では、ラモという少女の目を通して山の自然や祭事、巡礼などの様子が描かれている。

第一章 初期の頃
第二章 チベット帝国
第三章 宗教
第四章 モンゴル人とラマ
第五章 ダライ・ラマ法王の起源
第六章 権力を握るダライ・ラマ法王
第七章 日常生活


 あとがきによれば続編でチベット現代史を扱う予定、とのことですが、2008年現在、続編は出ていないようです。
 子供向けということで、昔物語のような語り口を楽しみながら読み進むことができます。大人の読む、チベットの歴史の入門編としてもおすすめ。
 掲載されている写真はH・ハラーによるもの。モンラム・チェモ(大祈祷祭)、市場の様子が写されています。
(2003.3.31)


「ジャータカ物語 上」「下」 第三文明社 レグルス文庫
津田直子 著

   ジャータカ物語―釈尊の前世物語 (上) (レグルス文庫 (155))

   ジャータカ物語―釈尊の前世物語 (下) (レグルス文庫 (156))


お釈迦さまの前世の物語「ジャータカ」を童話のかたちで語ったもの。上巻には28篇、下巻には25篇を収録。南伝大蔵経所収のパーリ語本の「本生経」による。

(上巻より)
ライオンとジャッカル
おしゃべりをやめた王さま
金色のしか
麦菓子の袋
ラーマ王子のサンダル
賢いはとと食いしん坊なからす
四つの詩
欲の報い  他

(下巻より)
マニカンタ龍王と兄弟の苦行者
目を施したシヴィ王
さる王とわに
月のうさぎ
白象と幼い王子
賢者スッパーラカ
友達
黄金の羽根  他


 お釈迦さまの前世の物語、と聞いて「お説教くさいかも?」と身構えましたが、いえいえ、とても面白かったです。
 挿絵入り、わかりやすい言葉、リズムある文章で書かれたお話。新書の体裁ですが、上巻にはふりがなもついているので小学校中〜高学年くらいで充分読めると思います
(しかし何故か下巻にはふりがなが無い)

 あとがきによれば、「アラビアン・ナイト」や「イソップ寓話」、「今昔物語」などに類話があるとのこと。仏教が伝わった国々よりももっと遠くまで広まり、親しまれたということに驚きました。なるほど、「わがままなおきさきの話」、「月のうさぎ」、「大地が壊れるっ」など、どこかで読んだ覚えのある展開でした。

 印象的だったのは。
 情のあついヤシャ女を捨てて人間界へもどる夫と息子のお話「足跡を知るじゅもん」。
 喧嘩の仲裁をかって出て、奥さんご所望の魚を手に入れる「ジャッカルと二匹のかわうそ」。
 修行者にわが身を施そうとしたウサギのお話「月のうさぎ」。
 金のガチョウに生まれかわったバラモンが、その羽根でかつての妻と娘を助けようとする「黄金の羽根」

 親孝行も施しの心も師弟の絆も、どれも日本の物語よりはるかに情が濃く、深く描かれているように思いました。

 そして、面白くて、何となく気に入ったこと。
 地上に何事か起こると、サッカ(帝釈)の座っている石の椅子が熱くなってしまうらしい。
(2009.11.19)

   

「光の子 ゲセル ―モンゴルの伝説― 審美社
野中惠子 文
トゥルブラム・サンダグドルジ 絵   

   光の子ゲセル―モンゴルの伝説


リン王国に生まれたゲセルは健やかに成長した。彼が王位につくことを恐れた大臣チョトゥンは、岩山に住むラトゥナ隠者と結託して、さまざまな怪物をゲセルに差し向ける。


 あとがきによれば、モンゴルの口承伝説を18世紀にモンゴル語で記録した「ゲセル王伝説」、そのドイツ語訳、さらに英訳されたものを下敷きにして、一部抜粋して物語にした絵本です。

 原著では、ゲセルは遊牧民の「洟垂れ小僧」として話が始まります。この本では舞台を王城に移すなどアレンジされているようですが、チベット版の「ケサル」は城を舞台にしているエピソードも多いので違和感はありませんでした。

 また、切り絵が素朴ながら華があって美しいです。たくさんのネズミが集まってネズミの物の怪の姿をかたち作っているなど、面白い表現だと思いました。

 膨大にある「ゲセル(ケサル)」のお話の中の一部分なので、他のエピソードも本になったらいいなあ、と思います。ことに競馬祭は大好きなのでぜひ読みたい。
 原著の「ゲセル王伝説」ですが、もしかしたら日本語訳されている「ゲセル・ハーン物語」(東洋文庫)のことでしょうか。こちらも読んでみたいと思います。
(2011.1.28)


「ゲセル・ハーン物語 ―モンゴル英雄叙事詩― 平凡社 東洋文庫
若松寛 訳

   ゲセル・ハーン物語―モンゴル英雄叙事詩 (東洋文庫)


天上界の帝釈天の子が地上に降り立ち、リン国の王・ゲセル・ハーンと号して諸国を平定。無辜の民を救い、地上に平和をもたらす。モンゴル古典文学「十方の主ゲセル・ハーン伝」の翻訳。

第一章 洟垂れジョル 
第二章 妖怪黒斑の大虎退治 
第三章 グム王
第四章 十二首魔王退治
第五章 シャライゴル征伐 
第六章 三十勇士の復活 
第七章 十五首魔王アン・ドゥルム・ハーン征伐 
第八章 ロブサガ・ラマ退治
第九章 地獄で大暴れ 
第十章 二十一首魔王征伐 
第十一章 十八首魔王ゴンボ・ハーン征伐
第十二章 ナチン・ハーン征伐



 チベット版ケサルの本があまりないので、見つけたものを、と手にとったモンゴル・バージョンのゲセル・ハーン伝。
 確かに、勇猛果敢なエピソードが多かったり、お妃たちが強かったりして、モンゴルっぽい感じがします。

 壊れた寺は施主が直すべし。王なき軍は妃が取りしきるべし。

 これを実行しそうな気骨あるお妃方が登場して、面白い。

 チベット・バージョンと同じなのは、ゲセル(ケサル)の兄が地味でかっこいいこと、叔父が情けないところ、ゲセルが女に弱いところ。何度「忘れ薬」を盛られれば済むんですか??
 気に入ったのは――。

 戦いで臆した味方をあえて責めず、その名誉を守ろうとするゲセルの言葉で締めくくられた「妖怪黒斑の大虎退治」。

 ゲセルの留守中、妃ロクモ・ゴアを奪おうと3人のハーンがやってきた。彼らから逃れようとしたロクモ・ゴアは、神通力で雉や尼僧に次々に変身する。幻想的な場面が印象的な「シャライゴル征伐」。
(2011.3.20)


「チンギス・ハーンの伝説
 〜モンゴル口承文芸〜
角川選書
蓮見治雄 著   

   チンギス・ハーンの伝説―モンゴル口承文芸 (角川選書)


モンゴルに歌い継がれた民話や叙事詩などの簡単な紹介と、それを生んだ遊牧民の生活との関係を考える。

 口承文芸という言葉も、それを採録している人がいるのだということも、これまで知りませんでした。聞き覚えて語り継ぐとは、文字と言葉を分けて考えられない世界に生きてる身には、なかなか想像がつかず興味をそそられます。日本人にはぴんとこないが遊牧民ならでは、という比喩の説明や、民話の中に繰り返し現れるモチーフの読み解きが面白い。単にどんな話や伴奏の種類があるという民俗資料としての説明だけではなく、遊牧民の生活のどんな場面で語られるというようなちょっとした説明から状況を思い浮かべられるのが嬉しいです。

 伝説を語るこつを表わした言葉が印象的。「これは本当のことだ」と思いながら「これを信じるように」という気持ちで語る。そうすると伝説は、その背景に「本当のことがあり」「信ずべきものがある」というものになるそうです。伝える、伝わるって、こういうことなのかも、とふと思います。
(2005.4.27)
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