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水を見るもの


山のふところの奥深く。
ひっそりと静かなみずうみがあった。
波ひとつなく天を映し、木々を照らして
沈黙を守っていた。

そのみずうみの只中に、
水が白く凍てつく場所があった。
夏でも決して融けることのない、冷たいものが
そこにあった。

これはなんだろう?

不思議に思った獣たちは 氷を覗き込んだ。
しかし、それは鏡のように 怯えた姿を映すだけ。

やがて、彼らは氷に慣れた。
名も知らず ただ、そこにあるものとして
受け入れたのだった。


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