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児童書 1

パディントンの本 1
「くまのパディントン」
福音館書店
M・ボンド 著  松岡享子 訳  

   くまのパディントン―パディントンの本〈1〉 (福音館文庫 物語)


「このクマのめんどうをみてやってください」
手書きの札をつけてパディントン駅にいたクマがブラウン家に同居することになった。

 デパートでの買い物、演劇の舞台へあがる、と後の巻にも出てくるおなじみの騒動なのですが、ネトネトぶりはこの巻の方が勝っているかと(笑)。はじめてロンドンへやってきた話なので、エレベーターや地下鉄に驚いたり気分悪くなる様子に笑ってしまう。
「ぼく、お金は使わないんだ」と言っていたパディントンが、バードさんも舌を巻く買い物上手になるのが面白い。
(2005.8.20)

パディントンの本 2
「パディントンのクリスマス」
福音館書店
M・ボンド 著  松岡享子 訳  

   パディントンのクリスマス―パディントンの本〈2〉 (福音館文庫 物語)


くまのパディントンがロンドンのブラウン家に馴染んできた頃。自分の部屋を貰った夏からクリスマスまでのお話。

 時々、読み返したくなるので大人になってから購入してしまいました。久々に開いてみて新鮮だったのが、パディントンの自立ぶりです。
 子供の頃に読んでいたためか、パディントンを愉快な人騒がせな「子供」のように捉えていたんですが、とんでもない。パディントン、すごく大人だ(笑)。
 ブラウン家のただの居候ではなくて、一家の買い物という大任を任されている(しかもバードさんを唸らせる腕前)。友人グルーバーさんとのつきあいでも、知らないことについてのアドヴァイスを求めることはあっても、解決するのはあくまで自分だってわかってるんですよ。クールだ、クールなココア飲み友達です(笑)。
 グルーバーさんのお店で「お十一時」を楽しむ場面の挿絵で、二人が同じ大きさのマグを持っているのが微笑ましいです。
(2005.5.20)

パディントンの本 3
「パディントンの一周年記念」
福音館書店
M・ボンド 著  松岡享子 訳  

   パディントンの一周年記念―パディントンの本〈3〉 (福音館文庫 物語)


パディントンがやってきて一年が過ぎ、夏の誕生日(クマは年に二回誕生日がある……そうだ)祝いも兼ねてブラウン家の人々はレストランへ食事へ行く。

 どの巻でも、わくわくしながら新しいことに前足をつけるパディントンが楽しい。たった三人分の食事のためにメリケン粉二袋をつぎ込んで小山のような団子をつくったり、ランドレットで洪水を起こしてしまったり。大失敗をしながら、それでも最後にはおいしいご飯をつくり、山のような洗濯物を片づけてしまう。たくましいなあ。町の人のユーモアに助けられてるのか、それとも周囲の方がパディントンに楽しませてもらっているのか。どちらでもあるところが、いいのでしょう。
 パディントンが行くところ、どこにでもネトネト、ベタベタがあるのね。
(2005.7.3)

パディントンの本 4
「パディントン フランスへ」
福音館書店
M・ボンド 著  松岡享子 訳  

   パディントンフランスへ (世界傑作童話シリーズ―パディントンの本)


ブラウン家の様子が「おかしく」なったのは、ブラウンさんが山のような地図やパンフレットを持って帰ってきた時から。夏休みをフランスで過ごす、という提案に、パディントンをはじめブラウン家の人々は夢中になる。

 パディントン作成の料行日底(旅行日程)に従ったら、フランスまで辿りつけるのかしら(笑)。旅行らしく珍しい食材を食べたり、お祭り見物をしたりしていますが、それでもお馴染みのマーマレードとココアにほっとするところが慎重派パディントンらしいのかもしれません。退役海軍大将と知り合いになって、貰い物のユニオンジャックを自転車に翻らせるあたり……ペルー人(熊)というより、すっかり英国熊だ、とくすくす笑ってしまいました。
(2005.7.22)

パディントンの本 5
「パディントンとテレビ」
福音館書店
M・ボンド 著  松岡享子 訳  

   パディントンとテレビ―パディントンの本〈5〉 (福音館文庫 物語)


ブラウン家にひと騒動とともにテレビがやってくる。珍しいもの好きのパディントンは、テレビを見るだけでは飽き足らず……

 イギリスの家庭にテレビが普及したのって、いつ頃なんでしょう。ブラウン家の様子からすると、これはその頃の物語なんですね。

 このシリーズ、玄人を笑う、というエピソードが度々登場しますが、殊に痛快なのはこの巻の「幸運は誰に?」ではないかと思います。クイズ番組の司会者をパディントンがクマの理屈でやり込め(もちろん本人(クマ)はそんなつもりはないのですが)、見事賞金を手にする。パディントンを応援する観客も面白いのですが、やり込められた方のテレビ局の粋なはからいも素敵です。
(2005.7.26)

パディントンの本 6
「パディントンの煙突掃除」
福音館書店
M・ボンド 著  松岡享子 訳  

   パディントンの煙突掃除―パディントンの本〈6〉 (福音館文庫 物語)


パディントンがイギリスへやって着てから三年が経とうとしている。ブラウン家には、リマの老グマホームからルーシーおばさんの百歳の誕生日を知らせる電報が届いていた。

 クリケットをしたり蝋人形館へ行ったり忙しいパディントンですが、あの、家にいる時の騒動が一番面白いです。だから、ラストシーンのひとことが、ブラウン家の面々と同じように嬉しいです。続きはないのかな、とついつい考えてしまう。
(2005.8.10)

パディントンの本 7
「パディントンの妙技公開」
福音館書店
M・ボンド 著  松岡享子 訳  

   パディントン妙技公開―パディントンの本〈7〉 (福音館文庫 物語)


パディントンがイギリス帰ってきた。グルーバーさんの待つ商店街で、パディントンは石油会社の株を買わないかと見知らぬ男に声をかけられる。

 続きがもう一冊ありました。シリーズ7冊目ということで、パディントンのしでかすことがちょっともの足りない気もしますが。今回、グルーバーさんの店の骨とう品がよく売れた話にほっとしました。普段から、ちょこちょこしか売れてなさそうなんですもの、あの店は。
(2005.8.25)


パディントンの本 8
「パディントン 街へ行く」
福音館書店
M・ボンド 著  田中琢治 松岡享子 訳  

   パディントン街へ行く―パディントンの本〈8〉 (福音館文庫 物語)


街にクリスマスの飾りを見にでかけたブラウン一家とグル―バーさん。でも、パディントンの帽子が思わぬ騒動を巻きおこした。

 今回は特にグル―バーさんに注目してしまいました。
 パディントンはグル―バーさんの手作り庭園の最後の仕上げに石像を置こうと買い物に出かけます。もちろん、風変わりなものを手に入れて帰ってくるのですが――。
 いつも「ブラウンのだんな」と一緒に楽しんだり励ましたりする、一番の親友であるグル―バーさん。今回も、石像の「そういう」使いみちを教えてくれるとは。知的で、ほんとうの意味で優しい人なのです。
(2011.4.18)


パディントンの本 9
「パディントンのラストダンス」
福音館書店
M・ボンド 著  松岡享子 訳  

   パディントンのラストダンス (世界傑作童話シリーズ―パディントンの本)


好奇心いっぱいで、いつも前足を動かしているパディントンの最近の楽しみはミ
シン、探偵小説。愉快ではらはらさせられる短編7編。

 一番好きだったのは、パディントンがチャリティー乗馬競技会でみごとな成績をおさめ、寄付金をどっさり集めるお話(あ、もちろん寄付金は、大会主催であるジュディの学校が受け取るのですが)。
「あれ」とメレンゲを間違えるって、パディントンはどれだけ真剣に馬術の本を読んでいたのでしょうか。そして、あの短い足でどうやって乗馬するのかしら・笑。

 ちなみに、いつもおなじみのマーマレードサンドウィッチ騒動の犠牲者は、とある美しいご婦人でした。
(2011.5.2)


ゲド戦記1
「影との戦い」
岩波書店
U・ル・グウィン 著 清水真砂子 訳

   影との戦い―ゲド戦記〈1〉 (岩波少年文庫)


原題「A Wizard of Earthsea」。大小の島々からなるアースシー世界。その一つ、ゴント島に生まれ育った少年ゲドはたぐいまれな魔法の力をそなえていた。成長するにしたがい、その力は大きくなっていく。しかし、傲慢と軽率から、ゲドは自らが呼び出してしまった<影>につけ狙われることになった。

 名前は知っていましたが、何となく機会がなくて読んでいませんでした。
 ……渋いファンタジーですね。そこはかとなく漂う諦観、疲労感は児童書とは思えない。でも、こういうのが好きな子供もいますからね。底抜けに元気な物語を読むと息切れしてしまうような子供が(私か)。

 この巻で好きだったのは、オジオンとの再会の場面でしょうか。
 ゲドが成長したために、最初に出てくるオジオンとは印象が違う。また、ようやっと休める場所を見つけたときには、そこに休むわけにはいかない事情を背負ってしまった、という苦いせつなさのあるところ。やっぱりこれも渋すぎる。
 あと、カラスノエンドウ。信頼と希望と笑いを持っている、彼の存在だけが唯一児童書らしい気がします。

 この薄暗い世界観は好きです。でも、続きを読もうかどうか思案中。やたらカタカナが多いのが辛いのです。
 仮に、展開に勢いがあって地名を読み飛ばしても楽しめる作品ならいいんですが(←良くはないだろう)。これは「物の真の名が力を持つ」という物語――言葉を大事にして読むべき作品ではないかと思うので。さて、どうしよう。

 あ、もしカラスノエンドウが出てくるなら、読もうかな。
(2009.2.16)


ゲド戦記2
「こわれた腕環」
岩波書店
U・ル・グウィン 著 清水真砂子 訳

   こわれた腕環―ゲド戦記〈2〉 (岩波少年文庫)


原題「The Tombs of Atuan」。大巫女の生まれ変わりとして、少女はごく幼いうちに墓所へと連れてこられた。彼女は長じてアルハと呼ばれ、「名なき者たち」に仕えることになった。ある日、墓所の奥深い迷宮に魔法使いが入り込んだ。彼はアルハに彼女の本当の名前を告げる。

 ものすごくざっくりと読んだので、感想が間違っているかも(ひどい)。
 面白くなかったわけではないのです。丹念に読めば、きれいな言葉がいっぱいあって夢中になるだろうとは思うのですが、うまく入り込めませんでした。

 後半、アルハが魔法使いとともに外に出てからあとの方が好きです。
 アルハの怖れ、不安、憧れ、罪悪感が細やかに書かれていて、彼女を励ます魔法使いの温かい言葉は染みるようです。
 ああ、このために長い、長い、暗い前半があったのね、と思いましたが、やっぱり前半は辛かった。次の巻は、じっくり読めるタイミング……そう、通勤電車の中とかで読むことにします。

 素敵だった言葉は。

「あんたはきっと、静寂と、人の心の温かさにふれられる。風がなければ、ランプも燃え出すよ」

(2009.7.16)


「たのしいムーミン一家」 講談社 青い鳥文庫
T・ヤンソン 著  山室 静 訳

   たのしいムーミン一家 (新装版) (講談社青い鳥文庫)


原題「Trollkarlens Hatt」。冬眠から目覚めたムーミンは、ともだちのスナフキン、スニフとでかけた山の上で不思議なシルクハットを拾った。それは、下にあるものの姿をかえてしまう力を持っていて、飛行おにという魔物の落し物だった。

 挿絵が味があってすてきなので、つい読んでしまいました。な、なんじゅんねんぶりだ?
 放浪癖のスナフキン、「むだじゃ」じゃこうねずみ、臆病者のスニフ、可愛い(でも、ちょっとおばかな)スノークのおじょうさん……毒っ気のある登場人物は懐かしいです。
 ムーミン屋敷がジャングルになってしまう話が好きでした。家の中がジャングルなんて、何だか楽しいではないですか。

 子供の頃に読んだはずなのに、すっかり内容を忘れてしまって……今回、驚いたこと。ムーミンは映画「ターザン」を知っています。ムーミンパパは愛情に飢えた子供時代を送ったそうです。ムーミンママはお昼寝が大好きです。そして、みんなけっこう見栄っ張りです。
(2007.7.27)

 

「ムーミンを読む」 講談社
富原眞弓 著 

   ムーミンを読む


 戦時下から書き続けられた「ムーミン」シリーズは、その奥深い世界観とキャラクターの魅力で現在も世界中の人々に愛され続けている。シリーズ全9作品を読み解く一冊。

 仕事がらみで借りて読みました。漠然と、もっと昔に書かれた物語だと思っていたので、第二次大戦後の作品と知って驚きました。
 トーベ・ヤンソンは1939年に祖国フィンランドがソ連から宣戦布告を受けた頃からムーミンを描くようになったそうです。当時はフィンランドがソ連、ナチス・ドイツとの対立に苦しんだ時期で、風刺画家のヤンソンも何度も検閲にひっかかって作品を書き直さなければならず、息詰まる状況からのがれるために書かれたのがムーミンたちの世界。

 作品誕生の背景は興味深かったです。でも、あらすじの説明が多くて、正直「ムーミンそのものを読めば、これは読まなくてもいいな」と思ってしまいました。だって、物語の読み解き、などという美味しいところをぜんぶ持って行かれちゃった気がするのですよ。それは、自分でするよー!
 読書好きの人は、自身でムーミンを読み、挿絵を楽しまれた方がいいと思います。はい。
(2012.1.16)


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