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海洋小説    6

海の風雲児フォックス 1
「ナーシサス号を奪還せよ」 
三崎書房
A・ハーディ 著  高橋泰邦/高永徳子 訳 

   ナーシサス号を奪還せよ (1978年) (Misaki books―海の風雲児Foxシリーズ〈1〉)


下層階級の出身でパウダーモンキーから士官となった主人公フォックスは、有能なのにコネがないことから昇進の機会に恵まれない。時々、片目の視力を失いかけながらも、何としても戦闘に勝って生きのび成功しようとする。

   主人公の雰囲気そのままの、皮肉っぽいけれどどこか可笑し味のある小気味いい文が面白いです。「俺は一匹狼! 俺は拿捕賞金が好き! 俺は嫌われてもかまうもんか!」と、ひねくれているかと思うと少年水兵に優しさを見せる。つまらない女には目もくれない。立ち回りのうまさや自負心をぎらぎらさせてるかと思うと、ふと弱みを覗かせるところが妙に味があって、癖になりそうな面白さです。
(2004.7.1)

海の風雲児フォックス 2
「全艦エジプトへ転進せよ」 
三崎書房
A・ハーディ 著  高橋泰邦/高津幸枝 訳 

  全艦エジプトへ転進せよ (1978年) (Misaki books―海の風雲児Foxシリーズ〈2〉)


ある事情によりタイガー号からシェリダン号、カロードン号へと転属したフォックスはナイルの海戦に参加する。機転によって手に入れた任官先、英雄ネルソンの艦隊に加わったこと。ついにフォックスにも運が向いてきたかと思われたが・・・

   何て忙しい! 1巻の間に4艦に配属された士官なんて、他の小説にいるんだろうか? セント・ビンセント卿を一瞬絶句させた大胆さと機を見るうまさに脱帽。能無し上司をほっといて艦を切り盛り、部下からも賞賛の目で見られるのに、どうしていい気分にならないんだか。まったくわかんない男だ。ひねくれ具合がまだ不可解で、でも面白いです。
(2004.7.5)

海の風雲児フォックス 3
「レバント要塞を死守せよ」 
三崎書房
A・ハーディ 著  高橋泰邦/高沢次郎 訳 

  レバント要塞を死守せよ (1979年) (Misaki books―海の風雲児Foxシリーズ〈3〉)


ラクーン号の臨時の艦長となったフォックスは、婚約者ソフィーを残してアクレへと向かった。そこでエジプトにいると思われていたナポレオンの軍がアクレ目指して北上していることを聞かされる。それを食い止めることを義務と考えたフォックスはフランス艦と輸送船を沖で待ち続ける。

   この作品の文章は乾いた味わいがありますが、この巻のアクレ攻防戦の描写にはその味がぴったり合っている気がして、後半はあっというまに読みきってしまいました。昨日まで近くにいた乗組員が、今日は横であっさりと命を落としていく。そんな戦いが二ヶ月続いた、という簡単な文がかえって戦闘の激しさを思いうかべさせました。そんな中で時折思い出したように現れるベン・フェリスの姿が、辛口一方のフォックスの独白に優しみを添えています。
 この巻、前半部はフォックスがなかなか海へ出ないのでやきもきしました。同じ海洋小説シリーズでも、オーブリーは陸での話も好きなんですが、ラミジやボライソーにはさっさと錨をあげてちょうだいよ、と思うから不思議です(約一名は陸に上げると不倫するから・涙)。
(2005.1.20)

 

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