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推理小説 3

 

英国王妃の事件ファイル1
「貧乏お嬢さま、メイドになる」
原書房コージーブックス
リース・ボウエン 著  古川奈々子 訳

   貧乏お嬢さま、メイドになる (コージーブックス)


原題「Her Royal Spyness」。英国王族でありながら、公爵令嬢ジョージーの暮らしは貴族とは名ばかりの貧乏生活。ある日、最悪の縁談を耳にしたジョージーはロンドンへ逃げ出し、生活のためにメイドとして働くことにした。一人暮らしにようやく慣れ始めた彼女だったが、ある日帰宅すると浴槽に死体が浮かんでいた。

 いわゆる「コージーミステリー」と言うのでしょうか。シリーズ名は「王妃の事件ファイル」ですが、実際に働くのは継承順位34位と王位からかなり離れた貧乏貴族の若い女性ジョージー、正式にはグレンギャリーおよびラノク公爵令嬢ヴィクトリア・ジョージアナ・シャーロット・ユージニー。

 縁談を逃れて自立するためにロンドンへやってきたものの、暖炉の火の起こし方も、ミルクをどうやって手に入れるかもわからない世間知らずのジョージー。学生時代からの親友ベリンダの助けで、なんと架空のメイド派遣会社をでっちあげて広告を打ちます。もちろん、メイド姿で掃除に行くのはジョージー自身。
 仕事をしたり、親戚である王妃殿下の依頼で皇太子の女性関係をスパイする約束をしたり。忙しく過ごしていたある日、帰宅した彼女を待ち受けていたのは、浴槽に浮かぶ男の死体――。

 やっぱり読みどころは、イギリス貴族社会の空気。バッキンガム宮殿を訪れる時のお作法、たとえ王族でも女性はご法度の紳士たちの集うクラブ。パーティに社交シーズン。その中で、ジョージーは機転を利かせて謎の真相に迫っていきます。

 一人称で書かれていますが、事件解決のためのヒントがうまく文中に隠されているので、謎解きの楽しみも十分味わえる。軽く読み進む小説かと思ったら、意外としっかりしたミステリーでした。早く続きが読みたいです。
(2014.10.1)


英国王妃の事件ファイル2
「貧乏お嬢さま、古書店へ行く」
原書房コージーブックス
リース・ボウエン 著  古川奈々子 訳

   貧乏お嬢さま、古書店へ行く (コージーブックス)


原題「A Royal Pain」。「ドイツの王女のお世話をせよ」と、英国王妃からまたもや無理難題を言い渡された公爵令嬢ジョージー。しかも、迎えた王女はその美しさからは想像できないような問題児だった。そして、ジョージーの回りで、泥酔した若者の転落死、古書店で男性の刺殺体発見と次々に事件が起こる。

 2冊目も面白かった! 王妃さまからの今回の命は、イギリスを訪れるドイツ、バイエルンのハンネローレ王女のお世話をして、なんとか英皇太子と引き合わせなさい、というもの。いまだにベイクドビーンズでしのいでいるジョージーの懐具合で王女を迎えるなどできるわけがないのですが、それを何とか解決。しかし、登場した王女はとんでもない問題児でした。
 アメリカのギャング映画にはまって英(米)語を覚えたために、とてもではないけど、イギリス上流貴族、とりわけ王族の前に出せる王女ではありません。初対面でこれです。

 ハンネローレ王女はわたしににじり寄ってきた。「あのおばさんはどこかにやっちまおう。あなたとわたし、楽しくやろうぜ、ベイビー」

 ははは(^^;
 その後もハンネローレ王女、通称ハニは恋愛ごっこに夢中で、ホットでセクシーな女になると言ってはジョージーを悩ませるのです。
 しかし、でかけたパーティーでゲストが事故死、さらに街中で知り合った青年が勤める古書店を訪れたところ、そこで刺殺体を発見して犯人の疑いをかけられてしまうのでした。

 ドイツの王女が登場ということで、今回は少し第二次大戦時期のヨーロッパの事情が関わっています。古書店で殺された青年はヨーロッパで力を持ち始めていた共産党の党員で、その殺害事件にドイツ王女が関わっていたとなれば、外交問題に発展しかねない。そんな意味でもジョージーはなんとしても事の真相を突き止めなければならないのでした。

 途中から、完全に暴走しはじめたハニをとっとと帰国させることが目的になりそうで、おかしかった。そして、それがとんでもない事態に発展していくのです――。

 主人公のジョージーは行動的でさわやかだし(ちょっと不器用ですが)、そう簡単に犯人が見つからなくて読み応えもあり、もちろんイギリス貴族社会のおしゃれ、かつ滑稽な雰囲気も楽しみ。次の巻も出ているようなので探してみます。
(2014.10.20)


英国王妃の事件ファイル3
「貧乏お嬢さま、空を舞う」
原書房コージーブックス
リース・ボウエン 著  田辺千幸 訳

   貧乏お嬢さま、空を舞う (コージーブックス)


原題「Royal Flush」。有名な女性飛行士のメイドがひき逃げで死亡。遺留品になぜかジョージ―宛の手紙が残されていたことから、ロンドン警視庁はスキャンダルを避けるために彼女をスコットランドへ帰郷させる。
しかし、実は王位継承者を狙う犯人をジョージ―に捜させることが目的だった。やがて、継承順位の低い兄ビンキーや彼女にも危険が迫る。

 面白い! 舞台はいつものロンドンから故郷スコットランドのラノク城へ。湖あり山あり森あり、古い城もあれば、現代的(お話の中の)な飛行機と飛行場も出てきます。また、ジョージ―が子どもの頃から知っている人たちばかりが登場するので、彼女のお嬢様具合がよくわかる。冒頭の問題広告もそうですが、夕食のためにドレスに着替えてしまうというのは、やっぱり公爵令嬢ですね。

 登場人物が多くて覚えるのに苦労しましたが、その複雑さが事件の真相をうまい具合に隠していて、謎解きとしても面白かったです。真実が明かされた時には、思わずページを戻って、問題の場面を見直してしまいましたよ。確かに、そう言ってる! 気がつかなかった!

 惜しいと思ったのは、邦訳タイトル。あまり展開にあっていない、と途中で思ってしまうと、せっかくの後半の謎解きが興ざめになってしまいそう。

 そうそう、笑ったのはあの「伝統」の凶暴で小さな動物ですね。毛むくじゃららしい(笑)。こういう茶目っ気のあるセンスがイギリスらしい雰囲気に合っています。
(2015.1.7)


英国王妃の事件ファイル4
「貧乏お嬢さま、吸血鬼の城へ」
原書房コージーブックス
リース・ボウエン 著  田辺千幸 訳

   貧乏お嬢さま、吸血鬼の城へ (コージーブックス)


原題「Royal Blood」。英国王室を代表し、ルーマニア王家の結婚式に参列することになった公爵令嬢のジョージー。恐ろしく不器用なメイドを雇ったばっかりに道中は 苦労の連続だったが、なんとか目的地に到着した。そこは吸血鬼伝説が囁かれるブラン城。そして、結婚式を目前に不可解な出来事が次々に起こる。

 寄宿学校時代の友人マリア・テレサの結婚式に出席することになったものの、それほど親しかったわけでもなかったと首を傾げるジョージー。しかも、招かれたのは辺鄙な山奥の古城。吸血鬼でも出そうな、という不安を煽るかのように招待客一行は雪で足止め。そして、客の一人が毒殺され、ジョージーのメイドも行方 不明になった――。

 テンポがよいのと、王族(のはしくれ)という設定が生きた筋立てで楽しかったです。にわか仕立てのメイドのクィーニーの失敗と、決して器用ではないジョージーの取り合わせは大真面目であればあるほど可笑しくなります。吸血鬼の存在を否定しきれなくなって、朝からにんにく料理をがっつりいただくのには笑ってしまいました。

 また、由緒あるお城、貴族同士の血のつながりと確執が大陸ならではの雰囲気を醸しだしています。イギリスを舞台にしたこれまでの巻とは少し違った趣が楽しめました。

 そして、ジョージーがひそかに心配していたように、この旅の裏にはとある陰謀が隠されていたのでした。まさか、というか、やっぱりというか。王族とは一般人にはわからない苦労があるもの、としみじみしたのでした。
(2015.9.6)

 

英国王妃の事件ファイル5
「貧乏お嬢さまと王妃の首飾り」
原書房コージーブックス
リース・ボウエン 著  田辺千幸 訳

  貧乏お嬢さまと王妃の首飾り (コージーブックス)


原題「Naughty in Nice」。英国王妃のコレクションから貴重な「嗅ぎ煙草入れ」が盗まれた。ジョージーは消えた財宝の行方を追って、ニースへと向かう豪華寝台列車に乗りこんだ。そこで出会ったのは、あのココ・シャネル。彼女の要望で、ジョージーは王妃の首飾りを身につけてランウェイを歩くことに。ところが、ショーの最中に首飾りが忽然と消えてしまった。

 王妃からの依頼でリゾート地ニースへ向かう、ということで、珍しくお金の心配のいらない(笑)巻でした。
 不況の只中にあるイギリスからニースへ。社交界の人々はドイツで力を伸ばしつつあるヒトラーの噂をしたり、人気デザイナーであるココ・シャネルのパーティーに集まってくる――時代背景とうまくリンクしているのが面白いです。

 肝心のジョージーの探偵活動は……彼女自身が殺人の疑いをかけられてしまって、思うように進みません。でも、そこはいくつもの謎ときがうまく結びつくようになっています。
 それより、恋人ダーシーに実は妻子がいるのでは、という疑惑がジョージーをやぶれかぶれにしているようで(笑)お嬢さまの行動にいつも以上にはらはらしました。

 そういえば、ひとつ気になったところ。

「なんとまあ、お嬢さん。聞いてましたか? 下ですごい騒ぎでしたね。まるで映画みたい――それとも土曜の夜の<スリー・ベルズ>みたいでした」
「お金では育ちは手に入れられないということよ、クイーニー」



 罵り合いの痴話げんかを目撃してしまったジョージーと出来の悪いメイドのクイーニーの会話なんですが、この<スリー・ベルズ>って何でしょうね。
 前後のストーリー展開から想像するに、現代の感覚でいうTVの土曜ドラマあたりなのでしょうが、1930年代が舞台の小説なのでTVってありなのかしら。一応、1929年に英国放送協会(BBC)がテレビ実験放送を開始したらしいのですが、庶民的なドラマがもう放映されていたのでしょうか。
(2017.11.7)


英国王妃の事件ファイル6
「貧乏お嬢さまのクリスマス」
原書房コージーブックス
リース・ボウエン 著  田辺千幸 訳

  貧乏お嬢さまのクリスマス (コージーブックス)


原題「The Twelve Clues of Christmas」。もうすぐクリスマス。なのにジョージーは意地の悪い家族と最悪なクリスマスを迎えようとしていた。そんなときに目に入ったのは「良家の子女を急募」という求人広告。小さな村で開かれるクリスマス・パーティーで招待客たちを出迎える上品な仕事だった。ところが、平和そうに見えた村に不幸な事件が相次ぐ。囚人の脱獄、毎日一人ずつ謎の死を遂げる村人。やがて昔から伝わる魔女の呪いだという噂が立ちはじめる。

 久しぶりに手に取りました。一冊とばしちゃったかな。
 舞台はイギリスの小さな田舎の村。由緒ある上流家庭で伝統的なクリスマスを登場人物たちといっしょに楽しめました。クリスマス・プデイングやミンスパイというご馳走、クリスマスキャロル、家庭でできるゲームがいくつも紹介されていていい雰囲気です。

 イギリスの『伝統的な』クリスマスというのがミソ。やたら寒い行事にゲストが文句たらたらなのが可笑しいです。屋敷が建てられたのは1400年代、アメリカはまだ「発見」されてないからお部屋にトイレがないのも当然ということですね。

 ちょっと横道にそれますが、『サーディン(すし詰めごっこ)』というゲームは面白そう。
 要はかくれんぼの反対。一人だけが隠れて他の全員が探す。隠れ場所を見つけたら、見つけた人も一緒になって隠れ、それを他の誰かが見つけたら一緒に隠れる。そうやって、すし詰めになって全員が集まるまで続けるらしい。最後はにぎやかになって隠れ場所がわかりそう(笑)

 閑話休題。

 今回の舞台となったホース=ゴーズリー家は準男爵の家柄。ジョージーのラノク家と同様にかなりつましい生活を送っている様子ですが、レディ・ゴーズリーもご主人も人柄がいいし、娘のバンティもさっぱりと気持ちのいい女性。ジョージーとバンティはどこか似た境遇の同年代の女性なので、これからもそろって登場するといいな。

 また、いまだに(笑)謎多きダーシーがこのゴーズリー家と親戚ということが偶然わかりまして。これってこれまでのシリーズ最大の進展では?

 さて、事件の方は……以下、ネタバレあります。
 
 
 
 
 
 村で起きる連続死亡事故は、実は連続殺人ということがわかります。クリスマスの楽しさが一転恐怖に変わるのは、童謡に引っかけた殺人事件だから。
 ただ、それがわかるのが物語も後半になってからだし、なぜ童謡になぞらえられているかが今ひとつ納得いきませんでしたけど。

 ともあれ、クリスマスを祝う楽しさがたっぷり味わえた読書でした。

(2017.10.8)

 

英国王妃の事件ファイル7
「貧乏お嬢さま、恐怖の館へ」
原書房コージーブックス
リース・ボウエン 著  田辺千幸 訳

  貧乏お嬢さま、恐怖の館へ (コージーブックス)


原題「Heirs and Graces」。英国王妃から「公爵家の将来の跡継ぎを教育するように」と新たな任務を与えられたジョージー。自分自身のマナーもおぼつかないというのに、しかもその跡継ぎの若者ジャックは外国の農夫だというから、さあ大変。公爵家の人々は歓迎するどころか、よそ者に財産を奪われまいと敵意をむき出しにした。そして、現公爵の死体が発見される事件が発生! 警察は真っ先にジャックを疑うが、純朴なジャックの人柄に好感を抱きはじめていたジョージーは、彼が犯人だとはどうしても信じられず……!?

 表紙のジョージーはタイプライターの前できりっとしてます。おお、ついに貴族の子女も職業婦人になりますか、とわくわくしましたが、タイプの腕はまだまだ上達の余地があるようです。というか、これは就職無理(^^;)

 というわけで、王妃さまから依頼されたのは、やっぱりその身分を生かした、他の人には頼めない任務。
 王妃さまの友人である公爵夫人が亡き息子の忘れ形見がオーストラリアに生きていることをしり、英国に呼び寄せた。ジョージーの役目は、その農場育ちの若者ジャックに英国貴族らしいマナーを身につけさせることです。

 家柄と伝統が第一の公爵家に現れた珍客が巻き起こす騒動がおかしい。キツネ狩りと言えば……やっぱりこうしますよね。
 無知ゆえの失敗はするけれど、ジャックは飾らない人柄が魅力的です。いや、こういう人こそ公爵家にふさわしいのでは、と思ってしまう。
 ジョージーもばかげた風習がはびこる貴族社会には苦労しているので(ジャックとは別の意味ですが)、同士のような気持で面倒を見てあげているようです。

 そして、裕福な公爵家で渦巻く相続問題が恐ろしい事件を呼び寄せてしまいます。限嗣相続って資産を離散させないための風習なのでしょうが、それにしても次男以下や娘たちにとっては理不尽としか言いようのないものですね。

 これまでの巻にもまして英国貴族の考え方がじっくり書かれています。
 面白いなあ、と思ったのは、公爵夫人のエドウィーナ。何かと厳しく口やかましく、しかし地元の村人らに対する公正さや思いやりもあって、ノブレスオブリージュという言葉をあらわすようなキャラクターでした。

 ただ、謎解きは今回はやや物足りないですね。
 公爵の死体の第一発見者がジョージー(ともう一人)なのですが、その現場で感じた違和感を突き詰めて調べようという雰囲気にならないのでなかなか話が進みません。まあ、ジャックや公爵の甥っこ達が引き起こす騒動の後片付けに追われていたともいえます(笑)

 次巻はついにジョージーがアメリカへ旅するようで。貴族社会から一歩踏み出したジョージーの感想を早く読みたいです。
(2018.7.12)

 

英国王妃の事件ファイル8
「貧乏お嬢さま、ハリウッドへ」
原書房コージーブックス
リース・ボウエン 著  田辺千幸 訳

  貧乏お嬢さま、ハリウッドへ (コージーブックス)


原題「Queen of Hearts」。いよいよドイツの大富豪との結婚を決めたジョージーの母。でも、そのためにはまずアメリカで離婚手続きをしなければならない。というわけで急きょ、ジョージーをお供に豪華客船に乗りこみ、大西洋横断の旅へと発つことに。ところが船中で有名な映画監督から熱烈に口説かれた母は、かつての女優魂に火が付いてあっさり行き先をハリウッドに変更してしまう。映画スターに会えるかも!? 期待に胸を膨らませるジョージーだったが――。

 舞台は初めてヨーロッパを出て、アメリカへ。相手の同意なく離婚できるという制度、貴族のいない自由の国という言葉に舞い上がっているジョージーの母クレアやメイドのクイーニーがおかしい。おまけにハリウッド関係者の地に足のつかない言動行動にかこまれて、一番の常識人になってしまったジョージーがおとなしくなっているのも珍しい。母の芝居の下稽古の横をそっと通り過ぎる場面には笑ってしまいました。芝居とわかっていても、居心地悪いよね。
 また、ハリウッド成金がヨーロッパでかき集めたアンティーク品の数々を『見事な品だが、ちぐはぐ』と評するジョージーはやっぱりお嬢さまでした。

 後半ではいつもの推理力、行動力が発揮されて楽しくなってきました。ただ、推理は披露する場面が大事だと思うのですよねえ。犯人の自白ではなく、ジョージーの「名探偵 皆を集めて さてと言い」を楽しみにしてるんですけど。

 ともあれ、タイタニック号沈没の記憶も新しく、トーキー映画が主流になりはじめた頃。チャップリンも登場して、時代の空気を生かしたお話を楽しく読み終えました。
(2019.4.20)

 

英国王妃の事件ファイル9
「貧乏お嬢さまと時計塔の幽霊」
原書房コージーブックス
リース・ボウエン 著  田辺千幸 訳

  貧乏お嬢さまと時計塔の幽霊 (コージーブックス)


原題「Malice at the Palace」。英国王子もいよいよ年貢の納め時。結婚式を控え、王子の過去のスキャンダルが花嫁の耳に入らないようにするのがジョージーの今回の任務。ところが王家にとって都合の悪い殺人事件が起きて――。

 王家の問題王子の結婚がついに決まり、ジョージーは王妃から挙式までの花嫁の世話を頼まれます。ところが、住み込むことになった宮殿で王家代々の幽霊と遭遇、さらに死体まで……というぎょっとする展開。そして、死んでいたのが王子の元恋人で、スキャンダルが世間に広まるのを防ぐためにジョージーは捜査に協力することに。

 この巻もまたお金の心配のいらない(笑)展開で、ジョージーは推理に没頭できます。いや、花嫁であるマリナ王女のつきそいの隙間をぬっての捜査なので、お金くらいはスポンサーに出していただきたいですよね。
 今回、いつもは華やかな浮名を流すベリンダの繊細な内面がうかがわれるエピソードが書かれていました。ネタバレになるのではっきりは書きませんが、この時代の女性の苦労、世間の目というのは現代とはこんなに違ったのね。そして窮地に立った親友をジョージーはあたたかく支えつつ叱咤激励。この二人はタイプはまったく違うのにいい友達です。

 そして、ジョージーの恋も今回はあわやの危機から急展開。次巻に続くようです。ダーシー、がんばれ。
(2019.5.6)

 

英国王妃の事件ファイル10
「貧乏お嬢さま、駆け落ちする」
原書房コージーブックス
リース・ボウエン 著  田辺千幸 訳

  貧乏お嬢さま、駆け落ちする 英国王妃の事件ファイル (コージーブックス)


原題「Crowned and Dangerous」。行き先も告げられないまま、最愛の恋人ダーシーの車に乗せられ、ロンドンをあとにした公爵令嬢ジョージー。駆け落ち結婚が認められるというスコットランドの町を目指し、意気揚々と車を走らせる二人。ところが目的地を前に、最悪のニュースが舞いこんできた。ダーシーの父親が殺人容疑で逮捕されたというのだ。証拠も動機もすべて揃っていて、言い逃れの余地はない。王族のジョージーを事件に巻きこむわけにはいかず、ダーシーは婚約解消という苦渋の選択を迫られることに。

 ダーシーの父に殺人の嫌疑がかけられたことで、駆け落ち寸前だった二人の関係は白紙になりかけ……るのですが、芯の強いお嬢さまであるジョージ―は恋人を追って見知らぬアイルランドへ渡ります。
 いつもはジョージ―がトラブルに巻き込まれたところにダーシーがふらっとすがたを現すのですが、今回は反対。しかも、ダーシーの父のキレニー卿自身が自分の潔白を主張しようとしないという、ほぼ四面楚歌状態での推理と証拠集めにひきこまれました。

 今まで謎ばかりだったダーシーの生まれ育ち、親戚づきあい、友達づきあいが見えて面白い巻。ことに大おばおじ夫婦(ウーナとドーリー)の家庭の飾らなさ(適当ともいう)と温かさはジョージーを安心させたのでは。

 肝心の謎解きは、ジョージーがアイルランドに到着したあたりから撒かれた推理の種がきちんと後で回収されていくので(そして、さほど難しくない)楽しいです。

 そして、この巻の大活躍一等賞はクイーニー。あら、意外とお料理が上手で(まあ、レディズメイドの業務ではないのですが)頼りになります。ウーナの家に転職、という話も出ましたが、やっぱり「お嬢さんについていないと」と思ったようで。今後の巻でもあらたな才能を見せてほしいと思ってます。
(2019.8.22)

 

英国王妃の事件ファイル11
「貧乏お嬢さま、イタリアへ」
原書房コージーブックス
リース・ボウエン 著  田辺千幸 訳

  貧乏お嬢さま、イタリアへ 英国王妃の事件ファイル (コージーブックス)


原題「On her Majesty's Frightfully Secret Service」。婚約者のダーシーと結婚式の計画を立てながら過ごす夢のような時間はあっという間に過ぎ去り、彼はまたふたたびどこかへ旅立ってしまった。残されたジョージーは、王妃さまから与えられた任務を果たすため、たった一人でイタリアへ渡ることに。さっさと極秘任務を済ませて、彼の地でちょうど出産を迎えようとしている親友ベリンダを手助けする…はずだった。ところが、各国の要人が集まるイタリアの大豪邸で殺人事件に巻きこまれ、完全に足止めされてしまい…!?

 アイルランドのダーシーの実家に滞在するジョージーの目下の気がかりは、王位継承権を放棄して結婚の許可を得られるか、ということ。そして、肝心のダーシーがまたも極秘任務のために姿を消してしまったこと。
 しかし、残されたジョージーは暇を持て余し……などということはありません。
 ひそかにイタリアで出産する予定の友人ベリンダからは「寂しいから会いに来て!」と便りが、そして王妃様からの突然のお呼び出しに応じてみれば、次期国王となるデイヴィッド王子の交際相手との関係を調べて欲しいとのお達し。そして、イタリアで再開した母・クレアからはかつての情事の相手から恐喝されており、そのネタであるスキャンダラスな写真を取り戻してほしい、と頼まれます。

 いつにもまして、皆からあれこれ頼まれる損な役回りのジョージー!

 ですが、これまでと違って少し強くなったようですよ。母には自業自得、と切り返し、長距離列車で出会った好色な紳士の誘惑をぴしゃりと撥ねつけ、言葉の通じないイタリアでなんとかベリンダの居場所を探し当てるのです。なかなか、いいキャラクターになってきたなあ、と頼もしいです。

 この巻、謎解き自体はやや物足りなかったのですが、こうしたジョージーの軽やかな足取りや滞在先の貴族の館(学校時代の旧友カミラの家)で繰り広げられる上流階級の気だるく華やかな日常の描写が楽しかった。貴族たち、何かと飲み食いの心配をしているのが可笑しいなあ。

 そして、もうひとつ。このお話の背景の第二次大戦前のヨーロッパ情勢。といっても、物語の空の遠くに雲が見える、くらいの控えめな設定ですが。
 ナチス・ドイツを警戒したイタリア、フランス、イギリスによる国際会議がイタリアのストレーザで開かれています。その史実にからめたエピソードをジョージーは耳にすることになるのです。目にはしてません――ということでネタバレ回避(^^)

 ベリンダも無事に可愛い赤ちゃんを出産、その未来にも明るい兆しが望めたところで、この巻はおひらき。
 さて、肝心のジョージーとダーシーの結婚式が楽しみです。

(2021.5.27)

  

英国王妃の事件ファイル12
「貧乏お嬢さまの結婚前夜へ」
原書房コージーブックス
リース・ボウエン 著  田辺千幸 訳

  貧乏お嬢さまの結婚前夜 英国王妃の事件ファイル (コージーブックス)


原題「Four Funerals and Maybe a Wedding」。「わたしたち屋根裏部屋で暮らすの!?」結婚式まであと1カ月だというのに、お金のないジョージーとダーシーの新居探しは早くも暗礁に乗り上げた。ところがそこへ、留守中の屋敷を譲ってくれるという気前のいい話が舞いこみ、喜び勇んでジョージーが屋敷を訪れてみると、留守を預かっている使用人たちは信じられないほど怠惰でどこか様子も変。それでも女主人として威厳をみせようとジョージーが使用人たちの振る舞いを正すと、その晩、何者かに仕組まれた罠であわや命を落としそうになり……。

 くすっと笑ったのが今回の原題。4つの葬儀と1つの結婚式(多分ね)……という感じでしょうか。読者の気持ちとしては(おそらく)だの(そこそこの確率で)と訳したくもなるほどずっと気が揉めてました。
 でも、ついにその招待状から始まる巻にわくわく。ジョージーとダーシーの紆余曲折も節目を迎えたようです。

 ただ、これまでを思えば大したことないとはいえ、小さな問題は山積み。
 王妃さまが結婚式に列席すると言われるし、ヨーロッパ中の王族の親戚を呼ばなければと言われるし。ブライズメイドは小さな親戚の王女が務めてくれるという(そのための可愛いドレスを試着した彼女らが『わあ、おひめさまみたい』と喜ぶシーンにはほっこりでしたが)。

 そして、お金のない二人の一番の心配は新居。
 ジョージーは「貧乏は慣れてる」「ダーシーがいれば」と言っていますが、さすがにジメジメした小部屋ばかり見せられてがっかり。花嫁の夢を砕かれて呆然とするジョージーですが、そこにすてきな結婚祝いが。母の元・夫で昔からジョージ―を可愛がってくれたサー・ヒューバートが、使っていない自分の屋敷に若夫婦に住んで欲しい、というのです。
 ちょうど任務で遠出しなければならなくなった夫を送り出しつつ、ジョージーは新居を整えると張り切って出かけたのですが……このお屋敷、どこかおかしい?

 広い館にしては使用人が少なく、執事の仕事ぶりもいいかげん。出される料理はしょぼくて、庭師たちは菜園の野菜を売りさばいている。これまでよりも奥さまらしくなったジョージーは一念発起してお屋敷改革に乗り出す――。

 彼女の奮闘ぶりも面白いのですが、やはりジョージーは「引き寄せ」ずにはいられない。
 前任の執事の不審死、謎の老婦人の存在、館を訪ねてきた男の死亡記事。真相を突きとめるために、今回は祖父、母との絶妙な家族トリオが活躍したのでした。
 この3人は名字も生き方、暮らしぶりもまちまちですが、いざという時の決断の早さと大胆さはそっくり。血は争えないですね。
 彼らの前に、帰ってきたダーシーがすることはほぼありませんでした。というか、まさか新妻の待つ新居でこんな事件が進行しているとは思わないよね。おつかれさん。

 ともあれ、無事に結婚式に辿りつけたのが嬉しいです。次巻は新婚旅行とのことですが、このカップルが行くところが平穏無事なわけはない。
 そして、個人的には母・クレアの恋を楽しみにしています。新しい人と出会うもよし、いや、時代背景を考えるとマックスおじさんの再登場もありえるかも。
(2021.6.18)

 

英国王妃の事件ファイル13
「貧乏お嬢様の危ない新婚旅行」
原書房コージーブックス
リース・ボウエン 著  田辺千幸 訳

  貧乏お嬢様の危ない新婚旅行


原題「Love and Death Among the Cheetahs」。突然決まった新婚旅行の行き先は、なんと植民地ケニア! 野生の動物がうじゃうじゃいて危険と隣り合わせ。しかし動物よりも本当に危険なのは、そこで暮らす英国人たちだった。彼らの愛憎劇に巻き込まれた新婚夫婦の運命はいかに!?

 ジョージーとダーシーの新婚旅行は、やっぱり安穏、幸せほっこり、だけでは終わらない(笑) 舞台はこれまでのヨーロッパから遠く離れたケニアへ。

 当時(第二次大戦期)はまだイギリスの植民地だったので、ジョージーたちが訪問したのは植民地入植者の優雅で頽廃的なコミュニティ。白人至上主義のいやらしさもたっぷり描かれて、事件の背景となっていきます。実力主義の入植者と地元政府との軋轢という面にも触れられて面白かった。

アフリカ舞台ということでサバンナの風景も期待したのですが、人間関係がメインでした。個人的には、もうちょっとキリンに出て欲しかったな(笑)

 謎解きは、どうも唐突な印象。事件が起こるのは中盤になってから、しかも、これといった手がかりも提示されないまま結末へと向かっていくので物足りない。ジョージーの鋭い観察眼が生きたとはいえ、もったいない展開でした。

 でも、人妻となったジョージーが落ち着いたマダムを目指したり、一方でダーシーに推理の腕を認めさせたと上機嫌になっているのが可笑しい。そして(一応)高貴な生まれであることをうまく利用するエピソードが、したたかなイギリス貴族という感じでいいですね。
 これから、ジョージーはどんな風に変わっていくのかしら。楽しみですよ。

(2022.2.20)

 

英国王妃の事件ファイル14
「貧乏お嬢さま、追憶の館へ」
原書房コージーブックス
リース・ボウエン 著  田辺千幸 訳

  貧乏お嬢さま、追憶の館へ


原題「The Last Mrs. Summers」。親友のベリンダとコーンウォールを訪れることになったジョージー。ベリンダにとってそこは子どもの頃を過ごした楽しい思い出の場所。ところが、幼馴染たちが長い年月を経て集ったことで、忌まわしい過去の扉が開くことに……?

 今回の注目キャラクターはベリンダ。最近いろいろとつらい体験が多く、「無茶はしない、バカはしない」と慎重になっている姿にもどかしい感じもしましたが、大丈夫、逆境の中でこそ自分らしさを取り戻していくようでした。

 相続した田舎のコテージを見に出かけたベリンダとジョージー。予想以上におんぼろな家に心折れたところでベリンダの幼馴染・ローズと出会って、家に招かれることに。しかし、館の主人・トニーが何者かに殺害され、ベリンダは容疑者にされてしまいます。連行されるベリンダを救うためにジョージーは奔走するのですが――。

 どことなく怪しい人物が多くて、謎解きも楽しかった。ベリンダの子供時代に事件を解決するカギがあったのですが、そこは少しせつない思いも。
 謎解きが終ってみれば、昔ながらの階級社会がこんな事件を引き起こしたともいえる。
 お館の貴族と地元の村との微妙な距離感、誰からも敬愛されていたベリンダの祖母もやはり古い階級意識をすりこまれた世代だった――。こう書くと、なかなかに重いストーリーだったのですが。

 嬉しかったのは、ちゃんとダーシーも活躍してくれたこと。そして、ベリンダにも幸せの予感が。
あ、そして、トラブルメイカーのクイーニーの料理が目覚ましい進歩を遂げていること、かな。彼女が活躍するエピソードもまた読みたいです。

(2023.3.10)

 

朝食のおいしいB&B 1
「注文の多い宿泊客」
ランダムハウス講談社文庫
カレン・マキナニー 著  上條ひろみ 訳

   注文の多い宿泊客 (ランダムハウス講談社文庫)


原題「Murder on the Rocks」。美しく静かなクランベリー島で、小さな朝食付きホテルをはじめたナタリー。経営は崖っぷちながら、お手製の朝食とお菓子は絶品と大評判。ところが、島にリゾート開発の魔の手が迫り、このままではナタリーの宿も潰されることに。なんとかして食い止めなければ! そう思った矢先、岸壁で開発会社社長が遺体となって発見された。開発に猛反対していたナタリーは真っ先に疑われてしまい……。B&Bのオーナーが、泡立て器を片手に名推理するシリーズ第1弾。

 クランベリー島で念願のB&Bを始めたナタリー。グレイ・ホエール・インは小さいながら美味しい朝食を売りにして、ようやく軌道に乗り始めたところ。しかし、島にリゾート施設を作る計画が持ち上がり、島民は賛成派反対派に分かれていた。その騒動の最中、リゾート開発業者が島で不審死。第一発見者のナタリーは開発反対派であったことから容疑者にされてしまった。

 と、いったお話。島の風景とナタリーの作るお菓子や朝食は絶品です。残念ながら、謎解き要素はあまりありません。ミステリー風を楽しむには十分なので、私にはちょうどいい感じでしたが。

 台所以外ではうっかり者のナタリーは可愛く、彼女と島の情報通シャーリーンや変わり者だけど心優しいクローデット、ハンサムな隣人ジョンとの交流は読んでいて楽しくなりました。溶かしバターをつけて食べるロブスターと、ナタリーの姪グウェンが描く玄人はだしの風景画が見たい、食べたい。
 二作目も見つけたら読んでみたいです。
(2014.12.12)

 

朝食のおいしいB&B 2
「料理人は夜歩く」
ランダムハウス講談社文庫
カレン・マキナニー 著  上條ひろみ 訳

   料理人は夜歩く (朝食のおいしいB&B 2) (ランダムハウス講談社文庫)


原題「Dead and Berried」。夜な夜な宿の屋根裏から聞こえる不気味な足音……まさか幽霊? そして、またも不幸な事件が。まじめだった宿の洗濯係が拳銃自殺したのだ。でも、新しいレシピのための材料を冷蔵庫に用意したまま自殺する人なんていない、と他殺を確信するナタリー。事件の真相を調べ始めると、やがて築150年の宿の、暗い歴史も明らかとなり……。

 グレイ・ホエール・インに手伝いに来てくれていたポリーが不審死。そして、ナタリーが以前に別れた元婚約者のベンジャミンがお客として現れ、ジョンとの関係にも危機が訪れます。そして、ポリーの死の真相を追ううちに第二の殺人事件が。次々と問題が起こって息つく暇もありません。前巻からの親友シャーリーンとナタリーの関係がぎくしゃくしてしまうのですが、そのせいで緊張感が生まれて、あの人もこの人も犯人に見えてしまうのです(笑)
 島の歴史は意外と古く、今はグレイ・ホエール・インとなった建物で100年以上前に起きた殺人事件がナタリーの探偵業にからんで来ます。
 のどかなクランベリー島に住む人が決してのどかなばかりでないことも読みごたえのある設定になっている、と感じます。前巻のロブスター漁師たちの絆や古風なしがらみの中に生きている女たち、そして現代らしい悩みを持っているらしい十代の子どもたちも。

 謎解きは正直いって満足できないのですが、キャラクターが魅力的なので、続きも読みたいです。

(2014.12.22)


朝食のおいしいB&B 3
「危ないダイエット合宿」
ランダムハウス講談社文庫
カレン・マキナニー 著  上條ひろみ 訳

   

 危ないダイエット合宿 (朝食のおいしいB&B 3) (RHブックス・プラス) (RHブックス・プラス―ランダムハウス講談社文庫)


原題「Murder Most Maine」。ナタリーの宿で初めてのダイエット合宿が開かれることになった。閑古鳥の鳴いていた宿にとって団体客は大歓迎、あわよくばナタリー自身もダイエットできるかも。そう期待したのもつかの間。同行していたハンサムなトレーナーが不審な死を遂げたことで、7日間の合宿に暗雲が垂れこめる。

 謎解きは前2巻に比べて凝っているので、ミステリーを読んだという満足感がアップしました。ただし、ナタリー、鈍い! 私ですらぴんときたのに、そこまで思いついてなぜ閃かない?! 歯がゆい思いもしました。

 今回もインで起きた殺人事件と、クランベリー島の歴史にまつわる事件が並行して解かれていくので、読者を飽きさせないと感心します。並行でなく、もっと関連性があったらさらに好みですけど。ただ、その場合はこのシリーズの明るい雰囲気が壊れてしまうので、それは望んではいけないのかも。

 ナタリーが殴られすぎだろう、とか、いっそミステリー・インとか銘打って営業できるんじゃないか、とか。掃除中にお客の持ち物を探るのはルール違反だろう、とかツッコミどころは絶えませんが。
 読み心地は甘すぎなくてけっこう好きなので、次の巻も続けて読んでみます。
(2014.12.31)


朝食のおいしいB&B 4
「海賊の秘宝と波に消えた恋人」
ランダムハウス講談社文庫
カレン・マキナニー 著  上條ひろみ 訳

   海賊の秘宝と波に消えた恋人 朝食のおいしいB&B 4 (RHブックス・プラス)


原題「Berried to the Hilt」。オフシーズンの冬が近づき憂鬱なところへ、近くの海で200年前の海賊の沈没船が見つかったとの吉報が入ってきた。調査のために大学の海洋考古学者と財宝ハンターの2チームがインへやってきたが、そのうちのひとりが殺され、島民のエレイザーが犯人として拘束されてしまった。

 数世紀前のクランベリー島をおとずれた海賊船のミステリアスな歴史が絡みます。今回はちゃんと現在の事件と関係ありましたね。前巻なんて全くつながりがなかったっけ。

 ナタリーは島の料理コンテスト審査員になったり、殺人事件の容疑者にされたエレイザーのために奔走して地元にも馴染んだ様子。ジョンともめでたく結婚の話がまとまったようで、いっそう島民らしくなるんだろうな。
 オーブンの故障というB&Bにとっては悪夢のようなトラブルも起きますが、グウェンやジョンの助けを借りて乗り切る腕前はなかなかです。結婚するなら、こういう旦那がいいですね(え?)

 ただ、前々からオーナーの立場を利用してお客の荷物を見るのはどうかと思ってましたけど、今回はメールの盗み見まで。さすがに嫌な気分になりました。
 出てくるごはんが美味しそうなので続きがあれば読むつもりですが、できればまっとうな推理をお願いします。
(2015.1.10)


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