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現代小説 15

 

「オリガ・モリソヴナの反語法」 集英社文庫
米原万里 著

  オリガ・モリソヴナの反語法 (集英社文庫)


1960年代のチェコ、プラハ。日本人の弘世志摩が通うソビエト学校には名物教師、舞踊教師オリガ・モリソヴナとフランス語教師エレオノーラ・ミハイロヴナがいた。ダンス好きの志摩はオリガを慕っていたが、その過去には深い謎が秘められていることに気づく。やがて大人になった志摩はオリガの過去そして同級生たちの消息を求めて、1992年ソ連崩壊直後のモスクワを訪れた。小さな手がかりをつなぎ合わせるうちに、オリガとエレオノーラの数奇な運命が明らかになっていく。

 志摩(シマーチカ)とかつての同級生カーチャの探索を通して、冷戦時代のソ連とその衛星国を覆う共産主義社会の空気、そして時を遡ってソ連建国からスターリン時代の粛清と強制収容所(ラーゲリ)に翻弄された人たちの姿が描かれています。

 これまで著者のエッセイしか読んでいなかったので小説を手に取りましたが、これは今年読んだ最高の小説かもしれない。なんというか、スケールが大きい。
 目を覆いたくなる悲劇も書かれているのに、それでもなお大らかで明るい。桁違いの小説だな、と感じました。

 オリガ・モリソヴナはダンサーだったのか、それともラーゲリに居た医師だったのか?美しいフランス語を話すエレオノーラ・ミハイロヴナの過去は? 2人はどのような経緯でソ連を脱出してプラハへやって来たのか?
 話の先が気になって、ぐいぐい引き込まれるように読み進んでしまう。

 シマーチカたちの思い出の場面ではキューバ危機や有人宇宙飛行が話題にのぼり、冷戦時代をなんとなく覚えている世代としてはプラハのソビエト学校の空気が身近に感じられました。

 また、作中のかなりの部分を占めるラーゲリ体験を書いたガリーナ・エヴゲニエヴナの話は壮絶としか言いようがない。題名となったオリガ・モリソヴナの独特の言葉遣いは、こんな体験を撥ね返す力の余波として生まれたのかも。

 フィクションではあるけれど、巻末の参考文献をみれば当時の出来事を忠実になぞっていることは明らか。
 重苦しい時代の空気と現代のシマーチカたちの生き生きとした会話が交互に書かれていて、その明暗のあまりの差に呆然となってしまう。
 ともかく、文章の力に圧倒されてめまいを覚えるような読書でした。
(2017.9.17)

 

「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」 角川文庫
米原万里 著

  嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)


1960年プラハ。マリ(著者)はソビエト学校で個性的な友達と先生に囲まれ刺激的な毎日を過ごしていた。30年後、東欧の激動で音信の途絶えた3人の親友を捜し当てたマリは、少女時代には知り得なかった真実に出会う。

 著者の私小説ともいえる作品。一応「小説」のカテゴリーへ。

 同様の位置づけの「オリガ・モリソヴナの反語法」と読み比べると面白いですね。この2作は、私には合わせ鏡のような関係の作品のように思えました。
 主人公が少女時代に通ったプラハのソビエト学校を起点に、過去へと遡り激動の時代を生きた一人の女性へ収斂していく「オリガ〜」。そして、クラスメイトたちのその後を追いながら「プラハの春」以降の中・東欧の複雑な地域情勢を生々しく感じさせる本作。

 見たこともない故郷ギリシャへの愛にあふれた、おませなリッツァ。
 共産主義かぶれなのに自分の家族の特権階級の生活に疑問を抱かない風変りなアーニャ。
 ユーゴスラビア人の一見近寄りがたいほど大人びたヤースナ。

 政治や国や思想はどうあれ、「私たちは私たちよ」という少女たちの友情が清々しい。どの時代でもどの国でもこの年頃の女の子は同じだな、と感じましたが、その後それぞれが出自ゆえに中・東欧の不穏な情勢に流されるような人生を送らざるを得なかったのですよね。
 冷戦が終わって経済的変化という大波がこの地域を覆う中で、「東西」とは思想の違い、地理的な違い、というだけでなく、東方正教とカトリックの違いもある、という点はこれまで気づきませんでした。また、かつてイスラム教圏だったことのある地域に多くのキリスト教徒が根づいていたこと(トルコが異教徒に寛容であったため)が現在の民族紛争に関わってるという点はもっと調べてみたいです。

 さて、4人の少女の中で特に印象的だったのはアーニャでしょうか。
 父親の赴任先を転々としていて一度も故国ルーマニアを訪れたことがなく、そのために故国と共産主義を必要以上に崇拝している少女。それなのに、お手伝いさんと自分の「身分差」や広い邸宅での生活に疑問を抱いたことがない。
 著者のマリはそこに違和感を感じていたのですが、30年ぶりに友人を探すうちにアーニャの出自、ルーマニア人であることへの異常なほどのこだわりの理由を見出すのです。

 久しぶりに会ったアーニャは言葉も住む国もマリの予想とは違っています。でも、「生き延びる」こと以外はあっさりと置き去りに忘れることができる生き方には「わかるなあ、こういう女性いるよなあ」と共感。本人もそれを意識してか無意識なのかはわかりませんが。

 嘘つきアーニャは、ほんとうに嘘つきだったんだろうか? それとも、少女時代に自分の心を隠していたのように、今でもまだ違うことを心の奥底では考えていたんだろうか?


 ところで、3つの短編をまとめたこの作品。それぞれタイトルに青、赤、白と入っています。これって、チェコの国旗の色ですね。
(2018.9.28)

 

「オロロ畑でつかまえて」 集英社文庫
荻原浩 著

  オロロ畑でつかまえて (集英社文庫)


超過疎化にあえぐ日本の秘境・牛穴村が、村おこしのため、倒産寸前の広告代理店と手を組んだ。彼らが計画した「作戦」とは! ?

 新幹線と在来線を乗り継ぎ、さらにバスで2時間。日本一の秘境、牛穴(うしあな)村の村おこしをめぐるドタバタコメディ。

 著者の本はどれも面白いのですが、これは私的にはいまひとつ、だったかな。
 東京の広告制作会社がたてた村おこしプランに無理がありすぎて。うまくいっても失敗しても、こんな生易しい騒動では済まないでしょ、と思ってしまった私が野暮? 美人キャスターが見栄を切ったくらいではどうにもならないのでは、と心配になってしまった。

 でも、名産オロロ豆のお味は美味しそうで、実在のモデルがあるのか気になりました。
(2017.9.30)

 

「なかよし小鳩組」 集英社文庫
荻原浩 著

  なかよし小鳩組 (集英社文庫)


倒産寸前の零細代理店・ユニバーサル広告社に大仕事が舞いこんだ。ところが、その中身はヤクザ小鳩組のイメージアップ戦略、というとんでもない代物。担当するハメになった、アル中でバツイチのコピーライター杉山のもとには、さらに別居中の娘まで転がりこんでくる。社の未来と父親としての意地を賭けて、杉山は走りだすが―。

 ずっと気になっていて、ようやく手にしました。あ、やっぱりこの作者さんの人情ものはいいなあ。そして、「オロロ畑〜」でおなじみのユニバーサル広告社は、やっぱりまともな仕事を受けていない(笑)

 ヤクザの小鳩組のCI(コーポレート・アイデンティティ)デザインって大変だろうなあ。でも、代紋ってほぼCIではないですか。
 その小鳩組の面々が面白い。ヤクザといっても一人一人は希望や愛情も持ったごく普通の人間。それが、その立場と見た目が災いして世間から締め出されている、という描き方にはっとしました。まあ、見た目ほっこりする小鳩組組長は実は怖いですけどね。いや、ほんと……こわっ。

 サブストーリーとして描かれている杉山と元妻、子どもとのエピソードは切ない。妻子から見たら、あやしげな会社で安月給で働き、タバコと酒におぼれた杉山はヤクザと似たように思えたんでしょうね。

 ラストシーンまで可笑しく、かつ少ししんみりとまとまっており、楽しかったです。ところで、小鳩組で顔を利かせる桜田は、「誘拐ラプソディー」に登場の桜田でしょうか??
(2017.12.22)


「ひまわり事件」 文春文庫
荻原浩 著

  ひまわり事件 (文春文庫)


隣接する老人ホーム「ひまわり苑」と「ひまわり幼稚園」は、理事長の思いつきで、相互交流を開始する。当初は困惑するものの、しだいに打ち解けてゆく園児と老人たちだが、この交流が苑と園の運営を巡り、思わぬ騒動を引き起こす。

 著者お得意の人情コメディ。老人ホームと幼稚園をいっしょに運営する、というのは一見良さそうな案ですが……そう簡単にはいかないようです(^^;)

 家族と別れてホームに入ったものの、お決まりの「折り紙レクリエーション」「健康体操」がつまらなくてストレスをためている老人たち。かたや、「おゆうぎ」や「はっぴょうかい」に飽きている現代っ子の子どもたち。どちらも「くだらない!」と文句を言っているのがおかしい。

 そんな中、園と苑を運営する理事長の意向で老人と子供たちの交流が(半ば強引に)はじまります。最初は互いにうろんな目で見ていたのが、次第に慣れてつきあえるようになっていきます。いや、麻雀とDSは偉大だわ〜。

 しかし、ひまわり苑に不正経理の疑惑が持ち上がり、ひまわり幼稚園でも園長の暴走運営が先生や子どもたちを困惑させるようになり、やがてとんでもない事件が持ち上がる――というのが後半でした。

 老人と子どもたちの交流をもっとたっぷり読みたかったのですが、話の視点が園児の晴也、教師の和歌子、ホーム入所者の誠次、と入れ替わるのが慌ただしくて、ちょっと残念です。
(2017.11.11)

 

「神様からひと言」 光文社文庫
荻原浩 著

  神様からひと言 (光文社文庫)


大手広告代理店を辞め、「珠川食品」に再就職した佐倉凉平。入社早々、販売会議でトラブルを起こし、リストラ要員収容所と恐れられる「お客様相談室」へ異動となった。クレーム処理に奔走する凉平。実は、プライベートでも半年前に女に逃げられていた。ハードな日々を生きる彼の奮闘を、神様は見てくれているやいなや…。

 サラリーマンの泣き笑い、を書いたら天下一品。絵に描いたようなブラック斜陽企業で奮闘する涼平、ちゃらんぽらんに見えていつのまにかクレームを収めてしまう力量の篠崎、珠川食品の経営に絶大な影響力を誇る、元芸者の゙明石町゙、ラーメン屋の頑固おやじ光沢――みんな魅力的で、笑えて哀しくて、愛おしい。

 特に、会社とサラリーマンをおでんダネに譬える篠崎はただ者じゃないです。

「おでん鍋といっしょだよ。ほら、狭いところぐつぐつぐつぐつ煮詰まってさ。部長だ課長だ役員だなんて言ったって、しょせん鍋の中で昆布とちくわが、どっちが偉いか言い合ってるようなもんだ。

こんにゃくはここじゃ安物だけど、味噌田楽の店にいけば堂々のエリートだよ。ちくわぶは専門職、天職を見つけたやつだな」



 だから、この鍋に居場所がなくても人生終わったわけじゃない。なんだかいい話ですよ。

 凉平が捨て身になって珠川食品の問題あれこれを暴くところは痛快。ただ、暴いた後が大事なので、そこがどうなったかももう少し読みたかったな。゙明石町゙が連れて来た人が珠川食品にちょっとばかり明るい未来をもたらしてくれるんでしょうか。
 ところで、社運を担っているのがインスタントラーメン、という安っぽさがまた雰囲気があっていいですね。
(2018.7.31)

 

「はやぶさ ―遥かなる帰還」 集英社文庫
花井良智 著

  はやぶさ 遥かなる帰還 (集英社文庫)


2003年、5月9日。内之浦宇宙空間観測所から、小惑星探査機「MUSES-C」が打ち上げられた。「はやぶさ」と名付けられたその探査機は、小惑星「イトカワ」のサンプルを持ち帰ることを目標に、長い宇宙の旅へと出発する。「はやぶさ」は「地球スウィングバイ」を経て順調に航行していくが、「イトカワ」到着の前後に、リアクションホイールが故障、エンジンも不調をきたし、次第に満身創痍となっていく。果たして、「はやぶさ」は星のかけらを採って、無事に地球に帰ってくることができるのか――。


 同名の映画のノベライズです。映画であれば、おそらく聞き流してさっぱりわからないであろう科学的な説明を字で読める(爆)これはなかなかの利点(^^)
 私がTVなどではやぶさのニュースを見て想像していたのと実際のトラブルはちょっと違うみたいでした。これは一度映画も見てみたくなりました。

 本のかたちになり、小説として読むとちょっとメリハリに欠けるというか、展開が地味で物足りない気もします。映画に囚われすぎたのでしょうか。行方不明になったはやぶさの信号を再びキャッチするところなど、もっとじっくり読みたかったな。

 でも反面、その淡白さがよかった点も。たとえば、新聞記者・真理の父親が物語の前面に出ることなく通奏低音のような存在に徹していたために、はやぶさに関わった名も出ない多くの職人たちの存在を感じさせています。

 また、お話の終盤、はやぶさ計画の最後を一人で見届けようとする山口教授の姿にはしんみりしました。研究者の歓び……と一言で言ってしまうのはなんですが、はやぶさの長い長い旅に寄り添って過ごした日々の重みが伝わりました。
(2017.10.26)

 

「ミルキーブルーの境界」 ハヤカワ文庫
アレックス・モレル 著  中村有以 訳

  ミルキーブルーの境界 (ハヤカワ・ミステリ文庫“my perfume”)


原題「Survive」。父は幼いころから愛してくれた。でも思春期を迎えたわたしは、あるクリスマスに「頭のてっぺんにキスをしないで」と邪険にしてしまった。翌朝、父は自殺した。もう、謝ることはできない――苦悩の時を過ごして数年、ジェーンはついに睡眠薬自殺を決意し、飛行機内で薬を呑む。だがその時、機体が落下。見知らぬ青年ポールと二人だけが生き残り、深い雪山に取り残される。過酷な自然の中、二人は生き延びようとするが……。


 延々と雪をかき分け、崖を登り、空腹と不安に耐える――地味なお話ですが、けっこう好みです。
 墜落した旅客機の残骸からわずかな食べ物と装備をかき集め、なんとか救助の手が届きそうな場所へ移動する。状況は厳しく、ジェーンとポールの語る家族の話も物悲しさがあります。
 死がすぐ隣に座っていることを日々考えながら暮らす2人が出会ったのは、何の運命だったのか。

 でも、苦しく、厳しい雪山を描写しながらも、物語の空気は清澄で明るいのが救いでした。
 ジェーンは事故直後から本能というか、反射的に『生きる』ことを目指しています。

 手が使えなければどうしようもない。自分へのメモ――生き抜くためには、もっとしっかりした手袋が必用。


 生物として当然の反応に、驚きというか、切なささえ感じます。
 人は多くの他人の善意によって生かされていることに気づく、また普段はそのことに気づいていないということを示すような小説でした。
(2017.11.21)

 

「バスターのきもち」 朝日文庫
ロイ・ハタズリー 著  山田久美子 訳

  バスターのきもち (朝日文庫)


原題「Buster's Diaries ― as told to Roy Hattersley 」。「男」と暮らすようになっておれは堕落しちまったようだ。こころならずも「男」に愛想を振りまくし、つい尻尾もブルブル振っちまう。まぁそのうちにどっちが上だか思い知らせてやるつもりだけどな…英国労働党議員が犬の視点で描く、ちょっとナマイキでかしこい愛犬バスターとの交流。


 野良犬だったバスターが飼い主の「男」と出会い、一緒に暮らす日々を語ったのを著者が書きとめた……という体裁の小説。あやうく伝記のカテゴリーに入れてしまうところでした(笑)

 バスターは、自分の中に眠る「オオカミ」に誇りを抱きつつ、人間とほどほどに良い関係を築いていきます。
 彼から見れば、人間のおバカさには呆れるばかり。何故、散歩の前に30分もかけて着換えなければならないのか、何故、公園でガチョウを捕まえてはいけないのか。それが女王陛下のガチョウだとしても。

 バスターと「男」は群れのリーダーの座をめぐって駆け引きを重ねます。最初は自分がいかに獰猛な犬であるかを誇っていたバスターですが、飼い主と馴染むにつれて、

 こっちがその気になれば、指を一本ずつ食いちぎることもできたんだぜ。でも、そうはしなかった。彼に愛情を感じはじめているのかな。おれとゴミのあいだにそういう感情はありえない。


 こんな具合に気心を通わせ、やがて気を遣って面倒をみてやる関係に(バスターが)。
 辛口コメントを繰り出すバスターと、人間の「男」――バスターの方がはるかに賢く大人びてみえるのが楽しい本でした。
(2018.3.10)

 

ゲストハウスわすれな荘 1
「夢見るレシピ」
ハルキ文庫
有間カオル 著

  夢見るレシピ ゲストハウスわすれな荘 (ハルキ文庫 あ 25-1)


ここは東京の下町、山谷と呼ばれるかつてのドヤ街。日雇い労働者が姿を消し、いま安宿を求めて訪れるのは、外国人旅行客と留学生たち。家族とはうまくいかないし恋も不調、自分を抑えて生きてきた。そんな千花が故郷を飛びだし辿り着いたのは、マイペースなオーナーと、しっかり者の翔太が経営するゲストハウス「わすれな荘」。個性豊かな住人たちとの賑やかな日常に、千花の心もほぐれていく。でもみんな、それぞれに事情を抱えているようで…。


 1巻を見つけました。主人公・千花が故郷の秋田から上京してきたところから始まっています。優柔不断で何につけても自信なげな彼女。なんと、上京のきっかけからして他人都合だったのね。それから思えば、2巻では活動的にがんばっていたんだなあ。

 それにしても、優しい物語。
 登場するのは、千花、オーナー代理の翔太、そして留守ばかりの橋島オーナー。ゲストは陽気なドイツ人コンビ、神戸からきたお嬢さん、ベトナムとネパールからきた留学生たち、そして英語教師のビッグマム。それぞれの事情、悩みがありながら、毎日できることをして進んでいく。
 千花が彼らに背中を押されながら、恐る恐る慣れない東京に居場所を見つけていく様子が温かく描かれています。

 次作はないのかな。もしもあったら、また「わすれな荘」の夕ご飯に与りたいです。
(2018.1.26)


ゲストハウスわすれな荘 2
「スープのささやき」
ハルキ文庫
有間カオル 著

  スープのささやき―ゲストハウスわすれな荘 (ハルキ文庫)


かつてドヤ街と呼ばれた日雇い労働者の町は、いまや安宿とバックパッカーの町。そんな東京・山谷で千花が暮らすようになって半年。しっかり者の翔太と自由すぎるオーナーがふたりで経営するゲストハウス「わすれな荘」に、新たな宿泊者(ゲスト)がやって来た。スペイン人のバネッサは、忘れられない恋を胸にここを訪れたというが――。初恋の記憶、故郷への思い…大切なものがあるからこそ、落ち込むこともあるけれど。優しいスープが心にしみる、とびきり愛しい連作集。オリジナルレシピ付き。


 わすれな荘を舞台にした作品がもう一冊あるようなので、第二弾ですね。でも、この一冊だけでも楽しめました。また、スープだけかと思ったら、登場人物たちそれぞれの思い出のレシピが載っています。ガスパッチョのレシピが嬉しい。

 さて、ほんわりした雰囲気の作品ですが、わすれな荘に集う人たちは様々な背景を持ってここに集まっていて、何かの折にその隠れた部分がこぼれ出て来る――そんな切なさもあって、かなり好みです。
 一番好きだったのは、スペインから恋心抱えてやってきたバネッサ。彼女の一途さが可愛いといったらない。

 しかし一方、わすれな荘のオーナー橋島が語る昔の山谷の風景は、バネッサや千花が生き生きと明るさ振りまく同じ土地とは思えない。
 かつて高度成長期に身を粉にして働いて東京の巨大インフラを作り上げた男たちは、やがて国に使い捨てられ行き場を失くして、ホームレスになるしかない――。

 大都市の裏の悲しい物語が忘れられないように、と祈りたくもなる。
 わすれな荘には「忘れないで」という思いもかけているのかしら、と勝手に想像してしまいました。
(2017.11.26)

 

スープ屋しずくの謎解き朝ごはん 1
「スープ屋しずくの謎解き朝ごはん」
宝島社文庫
友井羊 著

  スープ屋しずくの謎解き朝ごはん (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)


店主の手作りスープが自慢のスープ屋「しずく」は、早朝にひっそり営業している。早朝出勤の途中に、ぐうぜん店を知ったOLの理恵は、すっかりしずくのスープの虜になる。理恵は最近、職場の対人関係がぎくしゃくし、ポーチの紛失事件も起こり、ストレスから体調を崩しがちに。店主でシェフの麻野は、そんな理恵の悩みを見抜き、ことの真相を解き明かしていく。心温まる連作ミステリー。


 1巻を発見できました。主人公の理恵がたまたま降りる駅を間違えたことで、ひっそりと早朝営業している「しずく」を見つけたところから始まっていました。スープのいい匂いに誘われて路地を入るというところがいいですね(^^)
 理恵の職場での複雑な人間関係や「しずく」の常連さんの家庭問題など、少し重めのエピソードをやわらかい視線で描いていて、あらためて好きな作品になりました。
 最初の3作は雑誌掲載時は『つゆの朝ごはん』というシリーズ名だったようで。「しずく」の1人娘である露ちゃんが見聞きした常連さんの話、という体裁なのかな。本文は理恵が主人公であるという書き方なので、少し意外でした。

 最後のお話は書き下ろしで、麻野の亡き妻・静句の話というのは2巻も同じなんですね。店長の麻野と静句が出会って一緒に暮らすようになり、店を出すまでの経緯が書かれています。前の3作が「しずく」のカウンターの外から見た話なら、これは厨房の話。

 ………えっと、これは意外でした。こう来たか。

 これは、まったくネタバレできない展開なので感想も書きにくいのですが。


 静句さんの温かさ、まっすぐさが本当にたくさんの人を助けてきたのだとわかりました。2巻の書き下ろしでもそうでしたね。麻野がつくるじんわりと胃袋にしみるスープも同じなのね。優しくて心遣いがあって――。
 静句さんがスープをつくる場面も出てきますが、これは市販のコンソメキューブをつかった簡単な料理。でも、麻野のスープの原点はあくまでここにあるのです。

 そして、ひとつ盛大に驚いたこと。店のウェイターの慎哉が40代ですと!? そんな記述ありましたっけ?
 私のイメージでは麻野が30代半ば、慎哉は20代前半のフリーターだったんですけど。

 密林によれば、ちゃんと3巻も出ているようで。おいかけて読みたくなるシリーズを見つけられて嬉しいです。
(2018.6.12)

 

スープ屋しずくの謎解き朝ごはん 2
「今日を迎えるためのポタージュ」
宝島社文庫
友井羊 著

  スープ屋しずくの謎解き朝ごはん ~今日を迎えるためのポタージュ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)


東京のとある場所で、早朝のわずかな時間に、ひっそりと営業しているスープ屋しずく。シェフ・麻野が毎朝日替わりのスープを提供している。常連客である雑誌編集者の理恵は、新婚の上司・布美子の夫・克夫から布美子の様子がおかしいと相談を受けて、麻野に相談すると、鮮やかな推理を繰り広げ――! ほか、理恵の初恋の人との再会や狩猟体験、スープが食べられなくなった引きこもりの少年など、癒やされて元気が出る、全4話。


 スープ好きなので、見つけたとたんにふらふら手にとってしまった。またもやシリーズ2巻というトラップにかかってしまったけど、気にしない(笑)

 ビジネス街の片隅でひっそりと営まれているスープ屋「しずく」を舞台に、常連客やマスターの麻野親子の日常が優しい視線で描かれています。この「しずく」がランチやディナータイムだけでなく、早朝にも開店しているという設定がスープ好きにはツボ(だと思うの)。ディナーもいいけど、体にしみこむスープを朝にいただくというところが大事。
 常連客の理恵やその後輩の瑠衣、アルバイトの梓、と一話ごとに視点が代わるのもいい。スープ屋「しずく」を重点とした人の絆がつながっていく感じがするのです。

 好きなのは、ジビエにはまったOLのお話「山奥ガール」。猟師をめざす生真面目で一本気な青年・二神と、一見軽いけど素直で気性のまっすぐな瑠衣のカップルが可愛いです。

 そして、書き下ろしの「レンチェの秘密」では、「しずく」のアルバイトの梓の視点でマスター親子にまつわる少し悲しい思い出が描かれています。今は亡き麻野の妻が心優しい人たちの中心にいまも生きていることが切なくもあり、救われる気もする。

 ただ、ミステリーのような雰囲気でありながら謎解きは物足りない……というか、読者に展開を読み解かれないようにヒントを隠してしまっているので、これはミステリーとは呼びづらいかな。

 かなり本格的なスープメニューがお楽しみ。気になったスープはガスパチョと、桃の冷製スープ。自分では作らない冷製メニューですが、「しずく」でなら食べてみたいな。

 まずは1巻を探します。
(2018.4.12)

 

スープ屋しずくの謎解き朝ごはん 3
「想いを伝えるシチュー」
宝島社文庫
友井羊 著

  スープ屋しずくの謎解き朝ごはん 想いを伝えるシチュー (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)


調理器具の購入のため麻野と出掛けた理恵は、店の常連カップルと遭遇。結婚式を控え、仲睦まじく見えた二人だが、突如彼氏が式を延期したいと願い出る。その原因は、ゴボウ? 亡き妻・静句を思う麻野への、理恵の恋も動き出す!?美味しいスープと謎に溢れた全5話収録。


 シリーズ3冊目。密林など見るとマンガ化もされて人気もあるようなので、ちゃんと巻数をつければいいのに〜。今回もこっくりしたスープのように温かい雰囲気にひたれました。

 好きだったのは、理恵が勇気をだして麻野と調理器具を買いにでかけたお話。デートとも呼べないお出かけですが、理恵にとっては大事件なのが微笑ましい。時間をかけて、丁寧に、スープを煮込むように人との関係を紡ぐ――難しいけれど、そこからしか何も始まらないよね。

 逆に、常連さんの娘がひょっこり訪ねてくるお話は少々消化不良でした。
 老人が亡き妻から距離をおこうと思った理由は、愛情の有無という単純な話でもないと思うんですよね。茶飲み友達の園子さんを自宅に入れたのは、支えが必要だったのかもしれない。生きようと思ったのか、生きなければと思ったのか――妻を亡くした人の思いをもう少し深く読みたかったな。

 それにしても、巻数を重ねるにつれ、今は亡き静句の姿がすこしずつ理恵と読者の目に浮かび上がってくるようです。
 その人の温かな人柄が周囲の人に残したものが、いまのスープ屋しずくをつくり、そこに理恵が居場所を見出したんですよね(その当人がコンソメキューブのスープを作っていた、というのはお愛嬌。むしろその方が親近感が湧きますけど)

 理恵もどうやら麻野への恋心を自覚しはじめた様子。これだけ静句の気配に満ちた場所と人間関係の中にいるのは、これから辛くなってしまうのではないかと少し心配です。あるいは「静句を知らない人間」がいることが、麻野親子や慎哉の支えになっていくのでしょうか。

 今回の食べてみたいスープは、茸のミルクポタージュ。茸を何種類も入れてつくるなんて楽しそうですねえ。自分でつくると材料が余るから2種類くらいしか入れないんですよね。
 それにしても、レシピがついてないのが本当に残念。求む、レシピ本!
(2018.6.23)

 

スープ屋しずくの謎解き朝ごはん 4
「まだ見ぬ場所のブイヤベース」
宝島社文庫
友井羊 著

  
 スープ屋しずくの謎解き朝ごはん まだ見ぬ場所のブイヤベース (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)


 女の子の母親に幽霊が乗り移った? ジビエにまつわる記憶が抜け落ちたのはなぜ? 亡き大叔父が家に隠したお宝はどこ?そして変化を迫られる理恵の進路は? 絶品スープに浮かび上がる滋味豊かな人間模様。お腹と心を温めて、元気を注いでくれる全5皿。


 ひとつ戻って、4巻目も発見。理恵の仕事に関わる大きな変化も起きて、もしかしてこの巻で終了の予定だったのかな。でも、続きが出ていて嬉しいです。

 好きだったのは、理恵の遠縁の話。従妹の前では少しお姉さんぽくなるのが可愛い。理恵自身のプライベートは意外と書かれてこなかったので新鮮でした。
 親戚の中でも変わり者の大叔父が亡くなり、理恵は従妹とともに、大叔父が残したのではないかというお宝を探すことに。叔父さんの数少ない知人を訪ねた旅だけでは謎は解けず、やはりスープ屋の麻野の推理が決め手になりました。しかし、少し話を聞いただけで、すごい勘だなあ。

 そして、理恵の勤め先であるイルミナ編集部に訪れた変化。安定を好む性格の理恵には転職や移籍は考えるだけでもストレスになります。でも、だからこそ理恵は自分にとって自然な方向を見つけることができるのかもしれない。自分にとって無理なくできることをして、それが認められるのが仕事なのかもしれない。
 物事を器用にこなすのとは(それも良いことですが)違う生き方があると言われて、変化に弱い(笑)私もほっとしました。

 そんな最後の一話はおいしいものでいっぱいでした。白いブイヤベース、船場汁、クラフトビール(それか!・笑)
(2020.10.22)

 

スープ屋しずくの謎解き朝ごはん 5
「子ども食堂と家族のおみそ汁」
宝島社文庫
友井羊 著

  スープ屋しずくの謎解き朝ごはん 子ども食堂と家族のおみそ汁 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)


スープ屋「しずく」のシェフ・麻野は、ある日、子ども食堂の運営の協力を頼まれる。子ども食堂で麻野たちが出会ったのは、さまざまな傷を抱えた親子たち。ふさぎこむ少女が抱える秘密とは?引き離された父子に何があったのか?少女の家で起こる怪奇現象の真相は? 美味しいスープと鋭い推理で、彼らの問題を解決していく麻野。そして麻野自身も、幼い頃に負った傷と向き合うことに。


 1冊スキップして5巻目。3巻までは単独のお話でしたが、この巻は子ども食堂を軸にした4つのお話が載っています。
 子ども食堂は複雑な家庭の事情に苦しむ子どもたちの食生活を守ろう、という活動なので、エピソードもヤングケアラー、DVなど少し重苦しいものが続きます。でも、スープ屋しずくの穏やかな雰囲気に支えられて読み進みました。

 久々に読んでびっくりしたのですが、麻野がスーパーすぎですよ。
 子ども食堂にやってくる人たちに起こる事件に、まず巻き込まれるのは娘の露ちゃん、主人公の理恵なのですが。麻野は彼女らからもれ聞くちょっとした言葉を手掛かりにして難問を解きほぐして解決してしまう。しかも、スープ屋営業してるんですよね。いやいや、どれだけ万能なんだ。
 この麻野親子はどちらも感受性が強くて勘が鋭いので、生きづらいだろうなあ。理恵の安定感が彼らにとっても嬉しいのかもしれませんねえ。

 食べてみたいと思われたのは、麻野家の定番おみそ汁。そして、ミルク仕立ての冷製クラムチャウダー。レシピください〜(^^)

 ただ、難を言うと、ところどころ小さな違和感を感じることがありました。
 ボランティア活動である子ども食堂に、本職のビストロのシェフに協力を申し出るって(しかも飛び込みで)普通ないですよ。その他、家庭事情を話す場に子どもや繊細な性格の露を同席させるというのが、私には「ありえない」と思えてしまいました。
 心優しい人たちのお話だからこそ、小さな棘が気にかかるのです。

 表紙のほんわかイラストに惑わされそうですが、このシリーズは実は社会問題を意識した骨太な作品になってきていると感じた巻。
だから、ここで原点であるスープ屋さんのお話を読みたい。麻野が選んだ料理がスープであることを生かした展開を期待しています。
(2020.10.4)

 

スープ屋しずくの謎解き朝ごはん 6
「心をつなぐスープカレー」
宝島社文庫
友井羊 著

 心をつなぐスープカレー


リモート会議中に同僚がつぶやいた「人参がワープした……」という言葉の謎や、閉店を決めた洋食店「えんとつ軒」店主の真意など、思わずスープが食べたくなる、美味しくて優しい書き下ろし連作短編全4話収録。


 久しぶりに続きを手にとりました。やはりスープはいい。。。
 露が主人公の「奏子ちゃんは学校に行かない」では、露が父親譲りの観察眼を発揮して、クラスメイトのトラブルを解決。ほほえましくて爽快でした。
 このシリーズ、もとは麻野親子の話だったようですが、その片鱗があるのかな。このまま児童書のコーナーにおいても良さそうな気がします。

 もちろん、理恵が関わる事件の大人の物語も好きです。スープのおなかに染みる滋味は、たいてい大人の方が喜ぶものだから。

 理恵が気に入っている洋食屋・えんとつ軒の代替わりで起きた事件を描いた「ビーフカレーは巡る」がよかったです。
 理恵がぜひフリーペーパーで紹介したいと交渉している「えんとつ軒」は、代替わりとメニュー継承をめぐってすれ違いが続いていた。絶品ビーフカレーのレシピが受け継がれるか、永遠に失われてしまうのかは、部外者の理恵であっても気が揉める。しかし、そのレシピには、苦労してえんとつ軒を続けていた店主の苦い思いがあった――。

 ネタバレなので書けませんが、スープ屋しずくとえんとつ軒、理恵が愛するふたつの店には相通ずるものがあった、それだからこそレシピ継承をめぐる複雑な人間関係も自然にまとまることができた、という展開がよかった。きちんと筋を通したい、というそれぞれの思いがきれいに落としどころを見つけられた、という感じ。

 でも、私の勘違いかもですが、えんとつ軒は東京にあるお店ではなかったのかしら。途中から、えんとつ軒と蝋燭亭を混同してしまったのかな。

 さまざまなトラブル解決を通して、いっしょにいることが自然になってきた理恵と麻野。少しだけ(ほんの少し)あらたな進展がありそうで、嬉しいです。
(2024.2.25)

 

「疾風ロンド」 実業之日本社文庫
東野圭吾 著

  疾風ロンド (実業之日本社文庫)


強力な生物兵器を雪山に埋めた。雪が解け、気温が上昇すれば散乱する仕組みだ。場所を知りたければ3億円を支払え―そう脅迫してきた犯人が事故死してしまった。上司から生物兵器の回収を命じられた研究員は、息子と共に、とあるスキー場に向かった。頼みの綱は目印のテディベア。だが予想外の出来事が、次々と彼等を襲う。ラスト1頁まで気が抜けない娯楽快作。


 盗み出された炭疽菌を使った無差別テロを防ぐ、というハードな設定なのに雰囲気はどこかコメディタッチという珍しい小説でした。

 面白かった〜。しかし、こんなに主人公・栗林が何もしなくていいのかしら。
 上司の命令でサンプルの回収をしなければならないのに、頼りにできるのは息子・秀人だけ。彼の人脈によって目的地であるスキー場を特定し、偶然に出会ったスキー場のパトロール員を騒動に巻き込んでいく――こう書くと、おそろしく消極的な主人公ですねえ。

 でも、だまされて協力することになったパトロール要員・根津、そして秀人の友人それぞれのサイドストーリーがきちんと書かれているので満足できました。
 特に秀人の若者らしい素直さや気になる女の子の前での緊張ぶりは微笑ましい。どうせなら、秀人を主人公にしてもよかったのでは。

 ラストシーンは痛快に締めながらも栗林の行動に謎を残して終わっていて。その後の展開を想像する楽しみもありました。
(2018.5.26)

 

「生還の海」 徳間文庫
岡崎大五 著

  生還の海 (徳間文庫)


柏木は後輩の太田と菜実を率い、サーファーの救助に向かった。だが、荒れ狂う海をボートで乗り越えた先にはサーフボードが浮かぶのみ。柏木が焦って人の有無を双眼鏡で確認しなかったためだった。大波に呑まれた三人は、自らが漂流する羽目に。命からがら辿り着いた島にはある危険な人物が待ち構えていた。


 友人がライフセーバーをしていたことがあり、ふと興味を持って手に取りました。が、どうも私の予想からは大きく離れた展開で、釈然としないまま読了。
 以下、ネタバレ含みます。



 前半では水難救助員(と言うのかな)の日常訓練や事故の対応がていねいに書かれていて、そこは好感が持てたのですが。
 主人公・柏木ら三人のライフセーバーが遭難する辺りから「え、それありなの?」と感じることが増えまして。無人島に漂着&麻薬密売人に拉致……と、後半はまったく訳がわからなくなりました。
 最後に無理矢理にでも話を締めてあれば諦めもついた(?)んですが、これは続編があるんでしょうか、といったラストシーン。
 もう、どうしたらいいかわからなくなったので、おとなしく本を閉じました。
(2017.12.13)


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