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推理小説 8

  

「株価暴落」 文春文庫
池井戸潤 著

   株価暴落


 巨大スーパー・株式会社一風堂を襲った連続爆破事件。企業テロを示唆する犯行声明に株価は暴落、一風堂の巨額支援要請をめぐって、白水銀行審査部の板東洋史は企画部の二戸哲也と対立する。一方、警視庁の“野猿"刑事にかかったタレコミ電話で犯人と目された男の父は、一風堂の強引な出店で自殺に追いこまれていた。


 久しぶりに読んだ池井戸作品。古い経営体制から抜け切れずに負債をふくらませ続ける企業への融資をめぐる銀行内の攻防、企業テロが企業と社会に及ぼす影響がじっくり書かれていて面白い。ついでに、巨大企業の成長の陰で、たくさんの涙や死があったことも。

 半沢シリーズとつい比べてしまうけど、半沢よりも熱い(?)主人公で、融資についての銀行員の誇りが物語の展開の推進力になってる感じでした。これは、著者は書いてて楽しかっただろうなあ。

 謎解きについてはちょっと不満も。野猿刑事はどうやって犯人に辿りつけたのか、その動機は何だったのか。終盤の回収が駆け足すぎて、いろいろ零れてる気もしました。
(2023.2.27)

   

「神酒クリニックで乾杯を」 角川文庫
知念実希人 著

 神酒クリニックで乾杯を


 医療事故で働き場所を失ってしまった外科医の九十九勝己は、知人の勧めで「神酒クリニック」で働くことに。そこでは院長の神酒章一郎を初め、腕は立つが曲者の医師達が、世間に知られることなくVIPの治療を行っていた。彼らに振り回されつつも、新しい職場に慣れていく勝己。しかし神酒クリニックには彼が知らない裏の顔が。秘密のクリニックで勝己が請け負う「仕事」とは?


 変わり者揃いの探偵事務所……じゃなくて、クリニックが舞台でした。アクションあり、サスペンスありで、こういうノリの小説も書かれるんだな、と意外でした。キャラクター誰もが個性的で、主人公が一番地味というのは新鮮ですね。気に入ったのは、一見まともな真美さんですかね。主人公も、この風変りなクリニックで働くうちにこうなるんじゃないかな、と思ったりして。

 途中まで、これは探偵事務所いう設定でもよかったのでは、と思っていましたが、ちゃんと舞台が病院、キーパーソンが医師である必要がある設定になってました。

 ただ、ひとつだけ「えっと」と思ったのは……えっと、一般人は自分でそんなことしよう、なんて、死んでも考えないと思うなあ。
(2024.1.10)

 

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